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ライノウイルス/エンテロウイルスという普通の風邪が今は一番多い様子。 06/22/24

2歳の男の子がひどい腹痛を訴えました。肺炎による呼吸不全とショック状態に陥りかけていたということがわかりました。集中治療室で人工呼吸器治療を受けることになったけれども、無事に退院できました。遺伝子検査から、ライノウイルスかエンテロウイルス(いずれも最もありふれた普通の風邪ウイルス)の単独または同時感染によるものであることがわかりました。

エンテロウイルス属と呼ばれるウイルスのグループの中には、ポリオ以外のエンテロウイルス(Non-Polio Enterovirus)としてよく知られた、エンテロウイルスD68(EV-D68)、エンテロウイルスA71(EV-A71)、コクサッキーウイルスA6(CV-A6)がある。これらは特に胃腸感染からウイルス血症を引き起こす。EV-D68 はさらに呼吸器疾患を引き起こす。EV-A71 と CV-A6 は手足口病の原因となる。160種類以上の型を持つライノウイルスもNon-Polio Enterovirusととても似通ったウイルスであり、同じエンテロウイルス属グループの一員として分類される。特にライノウイルスの中でもC型として分類されるものは、エンテロウイルスD68 ととても似た性質を持ち、ウイルス血症を引き起こす。ライノウイルスは通常秋と春に増えるが、基本的に1年中流行している。

ライノウイルスにかかると、大抵は鼻風邪程度で済むが、喘鳴・喘息の悪化、中耳炎、副鼻腔炎、細気管支炎、気管支炎、肺炎を引き起こすことがある。
今年は春以降、小児・大人問わず、喘息、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎が増えているが、その原因はライノウイルスの流行によるものであることがわかる。Non-Polio Enterovirusにかかると、通常ウイルスは腸管に侵入するので、腹痛や嘔吐といった胃腸炎症状を引き起こしたり、さらに血液に乗って皮疹を引き起こすことになる (手足口病、ヘルパンギーナ)。同様に、ライノウイルスの一部であるライノウイルスC型も、肺炎を引き起こすばかりでなく、血液に乗って全身に散布され、ショック症状としての腹痛あるいは胃腸炎症状を引き起こしうる。

(注)ライノウイルス/エンテロウイルスの検査キットは一般の外来にはありません。

Rhinoviruses and Respiratory Enteroviruses: Not as Simple as ABC
CDC About Rhinoviruses
国立感染症研究所病原体別下気道炎由来ウイルス
FilmArray呼吸器パネルを用いた病原体サーベイランス
Evidence of the simultaneous replications of active viruses in specimens positive for multiple respiratory viruses