OUR MISSION

私たちのミッションは、
世の中に元気を拡散させること。

そのために、皆様の病気を
治すお手伝いをすること。
元気がない時、
ここでの小さな出会いと
ふれあいが
回復への起点になること。
そして、前向きな気持ちと
充実した時間を
取り戻してもらうこと。

私たちはいつもと同じように
安心の拠り所で
あり続けたいと思います。

カシューナッツアレルギーではグミ(ペクチン)に気をつけて   03/28/24

カシューナッツ・アレルギーは近年増加傾向と報告されています。よく用いられる食品添加物であるペクチンは、カシューナッツと交差反応(感作)するため、カシューナッツにアレルギーがあることが判明している場合には、注意すべきです。フルーツグミには、水飴、砂糖、数種類の果実エキスに加えて、ペクチンが含有されています。
グミを食べることで、アナフィラキシーを起こすことがあります。                                                             (日本小児アレルギー学会誌第38巻1号より)

花粉症に効く健康茶には実はステロイドが含有されていたという話  03/27/24

成長ホルモン補充療法中の13歳女子がDHEA-S(体の中で作られる副腎アンドロゲン・ホルモンで、思春期開始の目安になる)の低下がきっかけで、副腎皮質機能低下であると気づかれた。同時期に飲用中だった花粉症に効くという健康茶を中止したところ、副腎皮質機能の回復を認めた。健康茶に糖質コルチコイド作用物質(ステロイド)が含まれている可能性が考えられた。成分解析の結果、デキサメタゾンというステロイドが検出された。幸い、健康茶の飲用中止後も副腎皮質機能は何事もなく回復したが、突然の中止による副腎不全の危険性もあった。            ( 日本小児科学会雑誌第128巻第3号から )

麻疹の臨床経過    03/11/24

1) 麻疹の臨床症状
  麻疹の潜伏期間(ウイルス曝露から症状発現)は通常10日前後であり、発熱、カタル症状、結膜充血が数日間持続した後、頬粘膜における特徴的なコプリック斑が現れる。その1-2日後から顔面に発疹が出現し始め、その後全身性の特徴的な発疹が出現し、高熱が数日間持続する。重症化しなければ症状発現7~10日後に回復していく。

2)麻疹の臨床経過
 i)前駆期〈カタル期〉:(2~4日間)
  通常麻疹感受性者が麻疹ウイルスに感染すると、10日前後(8~12日)の潜伏期間を経て前駆期(カタル期)として発症する。この時期には38~39℃の発熱が続き、倦怠感、上気道炎症状、結膜炎症状が出現し、次第に増強する。乳幼児では下痢、腹痛等の腹部症状を伴うことが多い。発疹が出現する2日前頃には頬粘膜に、やや隆起し紅暈に囲まれた約1mm径の白色小斑点(コプリック班)が出現する。コプリック斑は麻疹に特異的であり、診断的価値が高いが、発疹出現の2日前頃に出現し、発疹出現後2日以内に急速に消退する。また口腔粘膜は発赤し、口蓋部には粘膜疹がみられ、しばしば溢血斑を伴うことがある。カタル期に次いで、発疹期となる。(写真は、Online Wileyによる)

 ii)発疹期:(3~5日間)
  カタル期の発熱が一旦下降(1℃程度)したあと、半日位後に再び高熱(多くは39.5℃以上)を発すると共に、疾患特異的な発疹が耳介後部、頚部、前額部より出現し、翌日には顔面、体幹部、上腕に広がり、2日後には四肢末端にまでおよぶ。ウイルス曝露から発疹出現までおよそ2週間である。発疹が全身に広がるまでの3~4日間は39.5℃以上の高熱が続く。発疹は当初は鮮紅色扁平であるが、まもなく皮膚面より隆起し、不整形の斑状丘疹となる。指圧により退色することも特徴の一つではあるが、次第に融合していき、次いで暗赤色となり、出現したときと同じ順序で退色していく。発疹期には上気道炎症状、結膜炎症状等のいわゆるカタル症状はより強くなる。麻疹の臨床経過での特徴はこのように前駆期(カタル期)と発疹期が比較的はっきりと分かれており、発熱もカタル期の終わりに一旦下降した後、より高熱を呈する(二峰性発熱)。

 iii)回復期:
  回復期に入ると発疹は退色し、発熱もなくなり、カタル症状も軽快していく。発疹は色素沈着がしばらくは残存する。麻疹は通常このような経過をたどり、合併症がなければ回復していく。

3)麻疹の合併症
  麻疹に伴って引き起こされる合併症は30%にも達し、その約半数が肺炎であり、以下腸炎、中耳炎、クループ等がある。また、頻度は低いものの、脳炎合併例もあり、肺炎と並んで麻疹による2大死因といわれており、要注意である。
 i)肺炎:
  麻疹に合併する肺炎には、大きくわけて細菌の二次感染による細菌性肺炎とウイルス性肺炎等があるが、最近の死亡例や呼吸管理を要する重症例には、間質性肺炎が多くみられている。

 ii)脳炎:
  1000例に0.5~1例の割合で発生する。麻疹の重症度に関係なく、発疹出現後2~6日頃に発症することが多い。半数以上は完全に回復するが、精神運動発達遅滞や麻痺などの後遺症を残す場合があり、10~15%は死亡するといわれている。特異的治療法はない。

 iii)亜急性硬化性全脳炎(SSPE):
  麻疹罹患後平均7~10年で発症し、知能障害や運動障害が徐々に進行し、ミオクロニーなどの錐体・錐体外路症状を示す。徐々に進行し、発症から平均6~9か月で死の転帰をとる進行性の予後不良疾患である。麻疹ウイルスの中枢神経系細胞における持続感染により生じるが、本態は不明である。麻疹初感染時の症状はほとんどが軽症で、その後もウイルスの一部の蛋白の発現に欠損が認められる欠損ウイルス粒子として存在し続けると言われている。

4)非典型的な経過をとる麻疹
 i)修飾麻疹(Modified measles):
  麻疹に対して不完全な免疫を持つ個体が麻疹ウイルスに感染した場合、軽症で非典型的な麻疹を発症することがある。その場合潜伏期は14~20日に延長し、カタル期症状は軽度か欠落し、コプリック斑も出現しないことが多い。発疹は急速に出現するが、融合はしない。通常合併症はなく、経過も短いことから、風疹と誤診されることもある。以前は母体由来の移行抗体が残存している乳児や、ヒトγ-グロブリンを投与された後にみられていたが、最近では麻しんワクチン接種者がその後麻疹ウイルスに暴露せず、ブースター効果が得られないままに体内での麻疹抗体価が減衰し、麻疹に罹患する場合(Secondary vaccine failure)もみられるようになった。

 ii)異型麻疹(Atypical measles)
 現行の弱毒生麻しんワクチン接種以前に、生ワクチンの発熱率が高く、不活化ワクチンと併用されていた時期があった。不活化ワクチン接種2~4年後に自然麻疹に罹患した際にこの病態(異型麻疹)がみられることがある。4~7日続く39~40℃台の発熱、肺炎、肺浸潤と胸水貯溜、発熱2~3日後に出現する特徴的な非定形発疹(蕁麻疹様、斑丘疹、紫斑、小水疱など、四肢に好発し、ときに四肢末端に浮腫をみる)が主症状で、Koplik斑を認めることは少ない。全身症状は1週間くらいのうちに好転し、発疹は1~3週で消退する。回復期の麻疹HI抗体価は通常の麻疹に比して著明高値をとる。発症機序はホルマリンで不活化された麻しんワクチンが細胞から細胞への感染を予防するF(fusion) 蛋白に対する抗体を誘導することができなかったことあるいは不活化ワクチン由来のアレルギーによると推論されている。異型麻疹と修飾麻疹とは全く別の病態であり、現在わが国では異型麻疹の発生はない。 

以上、国立感染症研究所 感染症情報センターによる。

麻疹が世界で大流行中、もうじき日本にも流入してくるでしょう。  02/26/24

麻疹(はしか)の世界的な大流行は、きわめて深刻な合併症や死亡のリスクを高めている。
米国、英国、EU諸国で、感染拡大が止まりません。米国では、カリフォルニア州、ジョージア州、ミズーリ州、ニュージャージー州、ペンシルバニア州、ワシントン州、オハイオ州、メリーランド州、ミネソタ州、フロリダ州で麻疹患者が報告されている。海外からの渡航者からの流入だとされている。

麻疹は非常に感染力が強いので、1人の患者でもアウトブレイクとみなされる。一人の麻疹患者は、ワクチンや自然感染による免疫を持たない人12人から18人に感染させる。それに対して、コロナでは約2人である。麻疹ワクチンは2回の接種で97%の小児を予防するが、ウイルスは空気感染(エアロゾル感染)で急速に広がるため、感染拡大を食い止めるためには、集団の95%以上が2回のワクチン接種を完了している必要がある。

米国の小児では、2022-23年は93%の接種率に留まり、日本でも、第1期が、2021年度93%、2022年度95%、第2期が、2021年度93%、2022年度92% にすぎない。

麻疹にかかった人は、皮疹ができる4日前から4日後までの9日間ウイルスを撒き散らす可能性がある。感染者が部屋を出てから2時間後まで感染する可能性がある。

10,000人の子供が麻疹に感染すると、2,000人(20%)が入院し、1,000人(10%)が永続的な難聴の可能性のある耳の感染症を発症し、500人(5%)が肺炎を発症し、10~30人(0.1~0.3%)が死亡する。 麻疹患者は、肺炎などの二次的な細菌感染症にかかりやすく、麻疹患者の最も一般的な死因の1つである。

麻疹の壊滅的な長期合併症である亜急性硬化性全脳炎は、記憶喪失、過敏性、運動障害、痙攣、失明などを引き起こすが、これらは麻疹から回復して6〜8年後に発症することがある。抗てんかん薬で症状が和らぐこともあるが、病気を治すことはできない。最近の研究によると、この合併症は以前考えられていたよりも一般的であり、麻疹にかかった幼児の約600人に1人(0.16%)が発症している。

日本でも、パンデミック時のワクチン接種率の低下とインバウンドの増加という条件は同じであり、もうじき国内でも流行し始めることが予測されます。未接種のお子さんには、できるだけ早い接種が求められます。

こらえきれない慢性咳嗽では咳の神経回路が異常になっている。 02/25/24

特にコロナウイルス感染後には、イガイガして我慢できない咳が長く続くことがあります。小児のクループでも止まらない咳が続きますが、まるで咳で痙攣しているかのようです。

皮膚の表面に傷や湿疹があると、痛みや痒みという感覚が感じられますが、特に痒みが強くなると、そこの痒みを払い除けたくなる切迫感が重なり、我慢できずに引っ掻いてしまわざるをえなくなります。引っ掻くのを我慢するためには我慢するぞという意思が必要です。特に乳児には我慢というものはないので、アトピー性皮膚炎の小さい子たちは、痒みの条件反射を抑えきれずに、自分を血だらけにしてでも痒みから解放されようとします。
皮膚の痒みの場合、局所に痒みを起こす炎症メディエーター物質が作り出されて、皮膚表面に張り巡らされている末梢神経末端がそれによって刺激され、そしてその刺激が末梢神経から脊髄を通って脳のてっぺんの中枢まで上っていく神経回路が関わっています。

咳も痒みと同じような作りです。ウイルスや細菌が炎症を引き起こしたり、花粉によるアレルギーによる炎症だったり、時には単に冷たい部屋の空気だったり、誘因は様々ですが、これらによって気管支の壁に張り巡らされている末梢神経(迷走神経)の末端が刺激されると、その刺激は脳幹まで行って帰ってくる神経回路を瞬時に上っていきます。さらにそこから脳のてっぺんにある認知脳、中枢神経まで上ります。意思を働かせる中枢脳は神経回路経由で咳を我慢させたり抑えようとします。

喋ると止まらなくなる咳、こらえきれないでタテ続きに出る咳、痙攣しているかのような咳では、末梢神経と脳幹からなる神経回路の過敏性が高まっているので、些細な刺激だけでも咳反射を引き起こすようになっています。あるいは、中枢神経と脳幹との神経回路も過敏性が高まっていたりします。

こらえきれない咳、特に長期間経過して癖になってしまっているかのような慢性の咳の場合には、こうした神経回路の過敏性を抑える薬が必要になります。しかし、現在薬不足が深刻なため、こうした薬のうち今入手可能なものは、選択的P2X3受容体拮抗薬だけになっています。

参照:Peripheral and central mechanisms of cough hypersensitivity

花粉症の鼻炎と共に起こる喉のイガイガや咳は鼻水が垂れ込むせいではありません 02/23/24

鼻水鼻詰まりと目の痒みは、花粉症でよく知られた症状です。一方、喉のイガイガ(時には痛みに近いものとして感じられることもある)と咳が、花粉が直接または間接的に引き起こしているものだということはさほど知れ渡っていません。

「その咳は鼻水が喉に落ちるせいで起こるもの」というもっともらしい話がまかり通っていますが、果たしてそうでしょうか? そもそも直径0.5mmの細気管支まで降りていって、鼻水が垂れ込んで咳を誘発しているのを実際に見てきた人はいません。

「One way, One disease」という見方があって、空気の通り道である鼻、喉、気管支は元々ひと繋がりのトンネルです。同じトンネルの壁の出入り口の方と奥の方という場所の違いがあるだけです。その一カ所に炎症という火事が起これば、同じトンネル内には、炎症を起こす物質がトンネルの内腔伝いだけではなく、トンネルの壁外に網の目のように張り巡らされた血管や神経のネットワークの経路をも経由して、違う部位にも炎症を引き起こすことが少しずつ明らかになってきています。

上気道と下気道の炎症過程は強い相互作用、クロストークがあることが証明されています。循環する炎症細胞や血液中の炎症メディエーターと呼ばれる物質、さらに脳にまでつながっている神経ネットワークをも介して、鼻の炎症は気管支の炎症を引き起こします。血流に乗った炎症細胞や炎症物質は、骨髄をも通過し、全身の免疫系の変化をももたらします。

花粉というアレルゲンによる鼻の刺激によって、実は全身の血流や神経経路を通じたアレルギー性炎症過程が始まっているのです。これらのことは、まだ完全に解明されているわけではありませんが、花粉に直接さらされる目、皮膚、鼻といった局所の症状に留まらず、咳がでたり、なんとなく体全体がけだるかったりするのは、おそらくこうした全身にわたるアレルギー性の炎症過程によるものだとみるのが、実際の診断や治療においても最も妥当なものだと考えられます。

参照:Nose and lung cross-talk in allergic airways disease

咳喘息の治療薬〜抗コリン薬吸入剤   02/22/24

咳喘息や気管支喘息の咳は、気管支の中で生じる炎症や粘液分泌による刺激作用によってもたらされる。喘息の炎症には、体内の様々なメカニズムが関与しているが、その中でも、副交感神経系自律神経作用が喘息を引き起こしたり増悪させるのにとても重要な役割を担っている。

アセチルコリンは、気道ムスカリン受容体に結合して気管支収縮、粘液分泌、炎症を誘発することにより、喘息の病態生理に重要な役割を果たしており、前臨床試験では、気道リモデリングにおけるコリン作動性気管支収縮の重要性が強調されている。

抗コリン薬はアセチルコリンの副交感神経作用に拮抗するため、喘息における吸入ステロイドや長時間作用性ベータ刺激薬の効果を補完するメカニズムで治療効果をもたらす。臨床データから、長時間作用型の抗コリン薬は忍容性が高く、副作用はまれで軽度であることが示されている。チオトロピウムの広範な臨床試験データ、特に喘息試験データは、さまざまな年齢層および喘息の重症度にわたる症候性喘息における上乗せ療法としての臨床的有効性と治療効果を実証している。

参考: The mode of action of anticholinergics in asthma

カンボジアで今年初のヒトインフルエンザA(H5N1)(鳥インフルエンザ)ウイルス感染 02/16/24

カンボジアでは、最近4件の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)(鳥インフルエンザ)ウイルスによるヒトへの感染が報告された。これらは2024年にカンボジアで確認された最初のH5N1ウイルスによるヒト感染である。この4人の感染者は小児3人(うち1人は死亡)と成人1人で、いずれも1月下旬から2月上旬に確認された。

すべての患者は、発病前に最近、病気の家禽(家畜として飼育される鳥)または死んだ家禽に暴露された既往歴がある。

現時点で、カンボジアで発生したこれら4例のH5N1ウイルス感染に関連して、人から人への感染拡大の兆候はない。

最初の2人の患者は疫学的に無関係であり、カンボジアの別の病院に入院したが、2人とも回復して自宅退院した。どちらの患者も症状が出る前に病気の鳥にさらされていた。3歳の子供の患者の家の周辺では裏庭のニワトリが死んでいるのが発見され、69歳の患者は家禽と闘鶏を飼育していたが、そのうち3羽がH5N1陽性であった。

3人目の患者は首都の小児科病院に搬送された直後に死亡し、4番目の患者は経過観察と治療のために入院した。3人目と4人目の患者は兄弟姉妹であるが、別の村に住んでいた。
4人目の患者の家庭から3人目の患者の家庭に死んだ家禽が持ち込まれ、兄弟姉妹ともに曝露された。

この2人の密接な接触者を監視し、さらなる感染を特定するための調査が進行中である。米国CDCは、保健省のカンボジア感染症管理局(C-CDC)、カンボジア国立公衆衛生研究所(NIPH)、農林水産省、Institut Pasteur du Cambodge(IPC)、世界保健機関(WHO)、米国国際開発庁(USAID)、食糧農業機関(Food and Agriculture Organization)、カンボジア野生生物保護協会(Wildlife Conservation Society of Cambodia)と緊密に連携し、これらの散発的な人への感染に対応している。

1人目と3人目の患者の検体の遺伝子配列決定により、両H5N1ウイルスはカンボジアで長年にわたり鳥や家禽の間で循環しているH5クレード2.3.2.1cであることが同定された。これは、複数の世界地域で家禽類に広く循環しているH5N1ウイルスとは異なる。
4人目の患者の検体の遺伝子配列決定が進行中である。

2023年中にカンボジアで発生した6件のH5N1ウイルスによるヒト感染のうち4件は致死的であった。2003年に最初の感染が報告されて以来、カンボジアでは64例が報告され、うち41例が死亡している。

家禽の間でH5N1ウイルスが蔓延している地域で、H5N1ウイルスに感染した家禽に直接または近接して無防備に暴露された人において、さらなる散発的な人への感染は予期されないものではない。

ヒトメタニューモウイルス感染症  02/12/24

すべての年齢層に上気道炎(鼻炎、咽頭炎、副鼻腔炎)から下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)まで引き起こす。大部分は上気道炎と推測されるが、乳幼児及び高齢者では下気道炎が多くなる。
潜伏期間は4〜6日、ウイルス量は発熱後1〜4日に多く、ウイルス排泄は1〜2週間続く。ただし、軽症者が多いため、検査をすることで感染拡大を抑えるのは難しく、流行を防ぐ目的で軽症患児に対しての抗原検査はやみくもに行うべきではない。
また、抗ウイルス薬もないため、治療は症状の重症度に応じた対症療法になるため、検査をしたところで治療方針が変わることはない。
細菌の二次感染を起こした場合は、抗生物質の使用が、気管支喘息を併発している子供の場合は、喘息の治療が必要になる。
インフルエンザのように5日間ほど続く発熱とRSウイルス感染症のような呼吸器症状が一緒になったような下気道炎症状を起こすこともある。
生後6ヶ月から初感染が始まり、2歳で50%、5歳で75%、遅くとも10歳までに一度は感染するが、一度の感染では終生免疫を得られず、何度も再感染を繰り返す。
重症例は、RSウイルスでは6ヶ月以下の乳児に多いが、1歳以上の幼児に多い。
インフルエンザ流行後の2〜6月に流行し、3〜4月にピークが来ることが多い。

子供には当たり前の医療を受ける権利がある。 02/09/24

子供の権利条約(unicef)の第24条に、「到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利」が認められるべきという文言があります。また、医療における子供憲章(日本小児科学会)には、「子供の最善の利益を考えてもらう権利」、つまり、病気の治療方針を決定する時には、子供にとってそれが最も良いことかを第一に考えてもらう権利が子供にはあるということです。

子供、特に乳幼児の治療方法を決めるのは、通常は養育者(主に親)です。実際に治療方針を乳幼児と相談して決めるのは非現実的なことがほとんどです。しかし、子供が親の所有物であるかのように、親の信条や好き嫌いだけを根拠に、子供の治療方法を決めてしまうことは、場合によっては、子供が最善の医療を受ける権利を無自覚のうちに奪ってしまう危険性があることを十分に考慮するべきであるという警告です。
アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギーの治療法を決めるときには、こうした問題がしばしば浮かび上がります。

この問題は、親として十分に理解しておかなければならないことです。子供は親を選べないのですから。

ニューヨークではインフルエンザでいつまでステイホーム? 02/05/24

ニューヨーク市の医療機関では、解熱後24時間のステイホームを勧めています。
CDCは、解熱後24時間ステイホームすることを推奨しています。登校も解熱後24時間ステイホーム後を目安とするように推奨しています。日本のように細かくわかりにくい規定や「しなきゃいけないんだよ」などという義務はありません。
一方、仕事の現場では、解熱後24時間のステイホームに加えて、発症後4〜5日間経過するまでの在宅ワークを勧めています。
CDCの解説文からは、ビジネス現場での感染拡大の社会的影響をより重視し、ビジネスが滞りなく進められることを重視しているように見えます。
もちろん診断書や証明書の発行といった “Not make sense”はありません。

Flu: What To Do If You Get Sick

ライノウイルスによる肺炎 01/24/24

2023年から現在に至るまで、肺炎がとても多い状況が続いています。咳が長引いている場合、発熱があってもなくてもレントゲンで肺炎が見つかる人が増えています。
まだ免疫力が十分に育っていない乳幼児、免疫力の低下している人や高齢者に限らず、全世代に渡って増えています。(パンデミック期間に賦活化されなかったために低下している感染症に対する免疫記憶のせいだと考えられています。)
肺炎のうちウイルス性は36%、細菌性が64%を占めると言われていますが、ウイルス感染で始まり、細菌感染が加わることも多く、ウイルスと細菌の両方が検出されることも多い。
肺炎が見つかった場合、それは細菌性であることが多く、適切な抗生剤による治療が必要になります。(ただし、深刻な抗生剤不足のため、今は適切な治療が行える状況ではありません。)
この1年間の原因ウイルスで最も多かったのは、実は最もありふれた風邪ウイルスであるライノウイルスでした。おそらく今もライノウイルスが多くの肺炎の原因になっているのだろうと考えられます。このウイルスが原因と想定される気管支喘息の悪化、副鼻腔炎、中耳炎もきわめて多い状況が続いています。
ライノウイルスは変異株が非常に多いため、有効なワクチンは存在せず、一生繰り返しかかり続けるいわゆる「風邪」です。検査キットは存在しないので、臨床診断は発表されている疫学情報に基づいて、臨床症状から推測しているにすぎません。
予防のためには、手洗い、マスクは有効です。

国立感染症研究所 下気道炎由来ウイルス2023~2024
CDC Rhinoviruses

アトピー性皮膚炎〜薬の塗り方情報サイト  12/26/23

マンガ「アトピー性皮膚炎の薬の塗り方」
今年はすでにスギ花粉の飛散が本格化しているようです。秋のアトピー性皮膚炎増悪期が一段落しようかという時期ですが、花粉の飛散によってまた直に皮膚炎の悪化が懸念されます。

皮膚炎の塗り薬は、欠かさず、几帳面に塗り続けることがとても大切です。そして、皮膚の状態を良好に保ち続けるためには、塗る量が大切です。「ティッシュペーパーが全面にくっつくほど塗る」ことこそが、「保湿」するということです。それぐらいの量を塗れば、効き目が出るように処方されているわけであって、それより薄く塗るということは、効き目が発揮される量以下しか塗られていないということです。

経験に基づけば、16歳ぐらいまでは男女を問わず、自分だけでスキンケアがきちんとできている子は極めて稀だと感じています。なぜなら、思春期までは、自分を客観的に観ることができないからです。スキンケアについては、時々は親が見てあげて干渉するか、自分で通院させて病院で指導してもらうかして、第三者に指摘される必要があります。自立のためにスキンケアを任せっきりにされた小学生のアトピー性皮膚炎のコントロールが良好な例を見たことがありません。子供の精神発達段階を考慮すれば、スキンケアは少なくとも誰かが見てあげないとうまくいかないと思われます。何歳になっても自分の背中は自分では見えません。

風邪にかからなかったツケが今回ってきている風邪の大流行 12/15/23

今年夏から目立ち始めたインフルエンザの流行がまだ収まりません。実は、2023年1月から始まったH3型の流行が完全に途切れることなく今も続いています。さらに、夏頃からH1pdm09が加わって、A型インフルエンザの2種類の亜種が同時流行し、数は少ないものの、ビクトリア系統と呼ばれるB型も散発流行しているため、稀に見る3種類の亜系統同時流行となっています。2週間前にA型にかかった人がまたすぐにA型にかかるというケースが稀ではありません。

それらに加えて、溶連菌、アデノウイルス、ノロウイルスも同時流行しています。そして、過去と明らかに違うのは、200種類以上あるとされている普通の風邪の重症化です。かつてないほど普通の風邪による発熱期間が長くなり、気管支炎や肺炎になる確率が明らかに高くなっています。普通の風邪ウイルスに過ぎないのに、熱が続いたり、咳が長引いたりするため、本人も家族も不安・心配が大きくなります。このような事態は決して過去にはありませんでした。こうした現象は実は少なくとも先進国では世界的に起きているようです。

3年間のマスク生活によって、インフルエンザを始めとして風邪のウイルスは伝染・流行を妨げられてきました。それはすなわち私たちの「風邪に対する免疫系」が風邪ウイルスに対処する方法をとことん忘れてしまうことにつながりました。私たちの免疫系、特にウイルスに最初に立ち向かう抗体などの免疫系は、時々本物の風邪ウイルスにさらされて、ブーストされ続けなければ、あっという間に戦い方を忘れてしまいます。

久しぶりに、しかも一度に市中循環し始めたウイルス達に遭遇しても、マスクをして風邪を引いていなかった人ほど、それらに対して免疫系がうまく働かずに、高熱になったり、熱が長引いたり、肺炎になったりしやすくなっていると考えられています。(したがって、マスクをしていなかった乳幼児や未就学児ほどあまり重症化せずに比較的普通の経過で済むようですが、小学生や大人の方が順調に治らないケースが多い。)

当院の場合、今年の秋以降、特別な名前のつく起炎菌やウイルスではない病原体によって肺炎になっているケースがパンデミック前の10倍ぐらい高い率で起きている感覚です。遷延性咳嗽に混じって、肺炎のケースが後を絶ちません。また、何十年間も喘息を発症せずに済んでいた小児喘息既往のある人が突然、気管支喘息を発症するということが起きています。また、子供の発熱の重症化の判断の分かれ目である4日または5日を超えて解熱しきれない風邪のケースも散見されます。

参考:The Case of the Never-Ending Illness Post-pandemic, winter has become one big blur of coughs and colds. Did something change? (The New York Times)
インフルエンザウイルス分離・検出報告数 2023/24シーズン(2023年12月7日現在)

カンピロバクター腸炎

現在流行中のウイルス性胃腸炎では、嘔吐が主体で、下痢があまり目立たない場合もあります。ロタウイルス以外のウイルスによる腸炎の場合は、発熱が目立たないことが多いのですが、最近の流行では発熱と嘔吐のパターンが主体になっています。
一方、細菌性腸炎の場合、下痢、嘔吐に加えて、38℃以上の発熱を伴うことが多い。最近、鶏肉をはじめとして生の肉を摂取する人が増えていて、細菌性腸炎の事例がとても多くなっています。そのうち95%以上にカンピロバクターが検出されます。カンピロバクター感染の潜伏期間は1〜7日、平均3日。必ずしも摂取した翌日に発症するわけではありません。
発熱、嘔吐を伴うウイルス性胃腸炎が疑われる場合でも、カンピロバクターや下痢原生大腸菌との鑑別が必要になります。

海外で評価されている学術研究

- Detailed Analysis of Immune Tolerance Mechanisms to SARS-CoV-2 in Children Is Needed (2021)『小児コロナ免疫についての論文』

- Early activation does not translate into effector differentiation of peripheral CD8T cells during the acute phase of Kawasaki disease (2010)『川崎病における免疫反応についての論文』

- Tenderness over the hyoid bone can indicate epiglottitis in adults (2006)『急性喉頭蓋炎を見つけるコツを発見した論文』

コンプライアンス

・オンライン資格確認体制
当院は、政府推奨のマイナ保険証による、受診歴、薬剤情報、特定健診情報、その他の診療情報を取得・活用して診療を行うオンライン資格確認体制を有しているため、受診時に医療情報・システム基盤整備体制充実加算が発生することがあります。

・一般名処方
当院では、薬剤の一般名処方を記載する処方箋を交付しています。

・明細書発行体制等加算施設基準
当院では、初診時、再診時に、診療内容明細書を無償で交付しています。