OUR MISSION

私たちのミッションは、
世の中に元気を拡散させること。

そのために、皆様の病気を
治すお手伝いをすること。
元気がない時、
ここでの小さな出会いと
ふれあいが
回復への起点になること。
そして、前向きな気持ちと
充実した時間を
取り戻してもらうこと。

私たちはいつもと同じように
安心の拠り所で
あり続けたいと思います。

梅毒の無料検査・相談室情報                04/01/25

梅毒の感染経路:膣性交、肛門性交だけでなく、口腔性交やキスでも感染します。
症状:無症状のことがあります。症状が出たり自然に消えたりすることがあります。感染後1ヶ月の第1期は、感染した部位に、出来物やしこり、ただれができます。治療しなくても、数週間で症状は消えます。感染後3ヶ月の第2期は、手のひらや足の裏など全身に淡い赤色の発疹ができます。治療しなくても、数週間から数ヶ月で症状は消えます。 そうして、感染に気付かないうちに病気が進行します。数年から数十年後に、心臓・血管・神経の異常が現れ、死に至ることがあります。
検査:血液検査で診断します。検査は、感染の機会から4週間経たないと反応が出ません。
治療:抗生剤による早期治療が肝心です。パートナーも検査を受け、治療することが必要です。
免疫:免疫はできないので、何度でも感染します。
重要:妊娠中にお腹の赤ちゃんに感染して、先天梅毒を引き起こします。

東京都多摩地域検査・相談室
は、匿名・無料で即日検査をやってくれています。HIV即日検査と梅毒即日検査(当日結果通知)を同時に実施。祝日を除く毎週土・日曜日の9:50〜11:00 問い合わせは 090-2537-2906 (祝日を除く 平日9:30〜17:00 土日9:30〜15:00)まで
住所:立川市柴崎町2-21-19 東京都立川福祉保健庁舎内2階 JR立川駅南口徒歩9分
予約:東京都HIV等検査予約センター 050-3801-5309(年末年始除く)10:00〜20:00
東京都HIV検査情報サイト

延髄の咳反射中枢が障害されることで、誤嚥しやすい脳疾患       03/09/25

延髄の咳反射中枢が侵されることで咳反射が抑制され、誤嚥を起こしやすくなる脳神経疾患には以下がある。

1. 延髄(外側)梗塞(ワレンベルグ症候群)
椎骨動脈(VA)または後下小脳動脈(PICA)の閉塞により発生。
延髄外側の孤束核(NTS)、迷走神経核、疑核(nucleus ambiguus)が障害される。
咳反射の求心路(迷走神経)や中枢の統合部(孤束核)が障害されることで、咳反射が鈍くなる。
嚥下反射も障害されるため、誤嚥が起こりやすい。
しばしば嚥下困難、嗄声(させい)、構音障害を伴う。

2. 球麻痺
延髄の運動神経核(特に迷走神経核、舌咽神経核、舌下神経核)が障害される病態。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)、ギラン・バレー症候群、脳幹梗塞などで見られる。
迷走神経核や疑核が障害されることで、咳反射の遠心路が機能しなくなる。
同時に嚥下障害を伴い、誤嚥性肺炎のリスクが高まる。

3. 多系統萎縮症
小脳型やパーキンソン型に分類される神経変性疾患。
延髄の神経核や迷走神経が障害され、嚥下機能低下や呼吸障害を引き起こす。
延髄の自律神経系や呼吸調節機構が障害され、咳反射の感受性が低下。
嚥下障害が進行すると、無症候性誤嚥(silent aspiration)が増加し、誤嚥性肺炎のリスクが高まる。

4. パーキンソン病
黒質-線条体ドーパミン神経の変性による運動障害を主体とする神経変性疾患。
嚥下障害が進行すると、咳反射の低下による誤嚥が問題となる。
咳反射の中枢である延髄の神経回路が機能低下し、異物を感知しても咳が起こりにくくなる。
嚥下機能も低下し、誤嚥性肺炎のリスクが上昇。

5. 進行性核上性麻痺
脳幹(特に中脳・橋・延髄)の神経変性を伴う疾患。
嚥下障害が早期から出現し、誤嚥性肺炎のリスクが高い。
延髄の咳反射中枢や関連神経核の変性により、咳反射が低下。
口腔期・咽頭期の嚥下障害が進行し、誤嚥が多発する。

Cough as a neurological sign: What a clinician should know ;World J Crit Care Med. 
延髄梗塞(Wallenberg症候群) 延髄外側の梗塞 孤束核・迷走神経核が障害され、咳反射低下
球麻痺(ALS, GBSなど) 延髄運動神経核の障害 咳反射の遠心路(運動)障害
多系統萎縮症(MSA) 自律神経・運動障害 延髄の神経変性による咳反射低下
パーキンソン病(PD) 黒質・脳幹の変性 咳反射の中枢が鈍化、誤嚥増加
進行性核上性麻痺(PSP) 脳幹の神経変性 嚥下障害と咳反射低下が進行
ハンチントン病(HD) 線条体・大脳皮質変性 咳反射低下+認知機能低下
これらの疾患では、誤嚥性肺炎のリスクが高いため、嚥下訓練や気道管理が重要となる。

咳反射と咽頭反射は同時に起こりやすい。 03/09/25

咳反射と咽頭反射(嗚咽反射)は解剖学的・神経生理学的に密接に関連しているため同時に起きやすいので、咳に伴う嘔吐は症状として一括りにすることができます。一方、嘔吐は咳以外にも、脳・内耳前庭系・消化管・心臓などありとあらゆる異常が原因になるため、「吐いた」原因を見極める必要があります。

1. 咽頭反射(Gag reflex)と咳反射(Cough reflex)はいずれも、迷走神経(Vagus nerve, CN X)と舌咽神経(Glossopharyngeal nerve, CN IX)を介して制御されており、経路を共有しています。
Gag reflex(咽頭反射)
主な機能: 口蓋、咽頭後壁、舌根などが刺激されると、喉を締める動き(咽頭収縮)を引き起こし、異物の誤嚥を防ぐ。
Cough reflex(咳反射)
主な機能: 気道内の異物を排除するため、急激な呼気を伴う咳を引き起こす。
いずれも、迷走神経(CN X)が両方の反射に関与しているため、相互に影響を与えやすい。

2. 解剖学的な刺激部位の重なり
Gag reflexは口蓋、咽頭後壁、舌根などを刺激することで誘発される。
Cough reflexは喉頭(特に声門周囲)、気管、気管支の刺激で起こる。
喉頭蓋(epiglottis)や咽頭下部の刺激は両方の反射を引き起こす可能性がある。
例えば、異物が口腔から咽頭を通って気道に入ろうとすると、まずGag reflexが起こり、それが不十分な場合にはCough reflexが続発する。

3. 中枢神経系での統合
両方の反射は延髄にある神経核(孤束核)で感覚入力が統合され、適切な反射を引き起こす。反射経路が隣接しているため、強い刺激が入ると両方の反射が同時に誘発されることがある。

4. 臨床的な例
異物が喉の奥(咽頭下部や喉頭)に接触すると、「えずき」と「咳」が同時に起こる。
喉頭の炎症や誤嚥では、咳とともに嘔吐感を感じることがある。
逆に、神経障害(例: 迷走神経障害、延髄梗塞)では、両方の反射が低下または消失することがある。

Gag reflexとCough reflexが同時に起こるのは、両者が迷走神経を共有し、延髄の中枢で統合され、刺激部位が重なっているためです。特に、咽頭下部や喉頭の刺激が両方の反射を誘発しやすく、異物や炎症によって同時に起こることがあります。

Physiology, Gag Reflex
The effect of stimulation and unloading of baroreceptors on cough in experimental conditions

P2X3受容体拮抗薬(ゲフォピキサント)             03/09/25

コデインは、オピオイドμ受容体作動薬であり、延髄の咳中枢の興奮を抑制することで咳を止める一方、オピオイド依存リスクがある薬物でしたが、
P2X3受容体拮抗薬(ゲフォピキサント)は、オピオイド受容体とは関係がなく、依存性のリスクがない薬物です。

P2X3受容体は、細胞外ATP(アデノシン三リン酸) によって活性化されるイオンチャネル型受容体(リガンド作動性イオンチャネル)です。主に求心性神経(感覚神経)に発現し、咳反射や疼痛に関与します。

1. P2X3受容体を活性化する物質
① ATP(アデノシン三リン酸)
P2X3受容体の主要なリガンドであり、直接結合してナトリウム(Na⁺)やカルシウム(Ca²⁺)の流入を促す。
神経の興奮性を増大させ、咳受容体の過敏性を高める。
炎症や組織損傷によって放出量が増加し、慢性的な咳(難治性咳嗽)や神経因性疼痛の原因となる。
② ADP(アデノシン二リン酸)
P2X3受容体に対する親和性はATPより低いが、部分的な活性化を引き起こす可能性がある。
③ 異常なATP代謝産物
炎症環境では、ATPがヌクレオチダーゼによって分解される過程で生じるAMP(アデノシン一リン酸)やアデノシンも、間接的にP2X3受容体の調節に関与する。

2. 慢性咳嗽(難治性咳)では、P2X3受容体が過敏になっています。
気道上皮や感覚神経からATPが放出されることでP2X3受容体が刺激され、咳反射の閾値が低下しています。P2X3受容体拮抗薬(ゲフォピキサントなど)によってその過敏性を低下させることによって、感覚受容体としての咳レセプターや求心性神経の働きを抑制し、咳反射のサーキットの興奮を抑えます。

3.神経因性疼痛においても、末梢神経や中枢神経において、ATPがP2X3受容体を介して痛みを増強するため、P2X3受容体拮抗薬の研究が進められている。

P2X3受容体は、ATPを主要なリガンドとし、ADPや炎症環境におけるATP代謝産物にも反応します。特に炎症時や慢性疾患(慢性咳嗽・神経因性疼痛)ではATP放出が増加し、P2X3受容体の過敏性が上昇することが知られています。

ATP, an attractive target for the treatment of refractory chronic cough; SPRINGER NATURE Link

咳止め薬(リン酸コデイン)の薬理作用               03/09/25

コデインは依存性、薬物乱用を引き起こしやすいという問題のある咳止め薬ですが、実際の臨床では、止まらなくなった咳反射のサーキットを断ち切ることによって「しつこい咳」「慢性咳嗽」を治癒方向に導き、治療の切り札になることもしばしばです。

1.リン酸コデインは、延髄の咳中枢に直接作用し、咳反射の閾値を上昇させる。また、オピオイド受容体(特に μオピオイド受容体:MOR)に結合し、神経活動を抑制し、これにより、求心性入力の伝達が減少し、咳反射が起こりにくくなる。
2. 一方、リン酸コデイン自体は、末梢の咳レセプター(感覚受容体)には直接作用しない。ただし、中枢性の咳中枢抑制作用を介して、求心性の興奮伝達を減弱させることで、間接的に咳レセプターの感受性を低下させる可能性がある。
3. その他の影響
鎮痛作用(μオピオイド受容体を介した痛みの伝達抑制)、軽度の呼吸抑制(高用量で延髄の呼吸中枢に影響)、依存性・耐性形成のリスク(長期使用で問題となる。市販薬の長期乱用は御法度です。)

このように、
リン酸コデインは主に延髄の咳中枢に作用し、オピオイド受容体を介して咳反射を抑制します。末梢の咳レセプターへの直接作用は少ないものの、中枢の抑制効果を通じて間接的に影響を与える可能性があります。

DRUGBANK; Codeine

咳は悪いものが肺の中に入らないようにする反射です。          03/08/25

咳はアキレス腱反射と同じように、決して意思で現れるものではありません。呼吸器にとって悪いものが入っていかないようにしたり、それらを吐き出して体を守るという大切な働きをしています。咳反射と呼ばれます。

咳反射は、以下の経路で制御されています。
1.末梢の咳レセプター(感覚受容体)が、気道(気管・気管支・喉頭など)に分布し、機械的・化学的刺激を感知。主にC線維(ポリモーダル受容器)やRAP(Rapidly Adapting Receptors:急速順応性受容器)が関与している。
2.求心性神経は、咳レセプターから迷走神経を通じて延髄の咳中枢に情報を伝達する。
3.延髄の咳中枢は、咳反射を統合・調整し、運動指令を出す。
4.遠心性神経は、横隔神経や迷走神経という経路を介して呼吸筋・喉頭筋に指令を送り、咳を発生させる。

のど、気管、気管支にある末梢の咳レセプター(咳受容体)は、主に以下の炎症物質によって刺激を受け、咳反射を引き起こします。これらの物質は、ウイルス感染、細菌感染、アレルギー反応、喫煙、大気汚染などの刺激によって放出されます。
1. ヒスタミン(Histamine)
肥満細胞や好塩基球から放出され、H1受容体を介して気道平滑筋の収縮や血管透過性の亢進を引き起こす。
気道粘膜の浮腫を促進し、気道の知覚神経を刺激して咳を誘発。
2. プロスタグランジン(PGs)
プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンF2α(PGF2α) などが気道のC線維を直接刺激し、咳受容体の感受性を増加。
気道平滑筋の収縮や気道の炎症促進にも関与。
3. ロイコトリエン(LTs)
ロイコトリエンC4(LTC4)、D4(LTD4)、E4(LTE4) は強力な気道収縮作用を持ち、咳レセプターの過敏性を増加。
喘息患者では特に重要な役割を果たす。
4. ブラジキニン(Bradykinin)
血管拡張作用を持つペプチドで、気道C線維受容体(TRPV1受容体)を刺激。
咳受容体を直接活性化し、咳反射を促進。
5. タキキニン(Tachykinins:サブスタンスP、ニューロキニンA/B)
求心性神経終末から放出される神経ペプチド。
ニューロキニン1(NK1)受容体を介して咳受容体を活性化し、咳を引き起こす。
6. トリップV1受容体(TRPV1)アゴニスト(カプサイシンなど)
TRPV1(Transient Receptor Potential Vanilloid 1)は咳レセプターの一部であり、カプサイシン(唐辛子成分)や高温、酸性刺激によって活性化。炎症時に感受性が増大し、咳の閾値が低下する。
7. ATP(アデノシン三リン酸)
P2X3受容体を介して咳受容体を刺激。慢性咳嗽(特に難治性の咳)に関与し、P2X3受容体拮抗薬が新たな治療ターゲットとして研究されている。

以上のように、
咳受容体は、ヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ブラジキニン、タキキニン、ATPなどの炎症メディエーターによって刺激を受け、咳反射を引き起こす。これらの物質は、ウイルス感染や喘息などの疾患で増加し、慢性的な咳の原因となることがある。

Airway Sensory Nerve Density Is Increased in Chronic Cough; ATS Journal

ダニ媒介脳炎(Tick-Borne Encephalitis; TBE)とは           03/03/25

ダニ媒介脳炎は中枢神経系に影響するウイルス感染症であり、軽症例から、より重篤で生命を脅かす病態まで、広い範囲での症状を引き起こします。東ヨーロッパからロシアに至るユーラシア大陸中央部、極東地域、中国北部までの広い地域で、およそ年間1万~1万5千例の感染があると推計されています。国内でも過去に北海道で5例の感染者が報告されています。

ダニ媒介脳炎ウイルスは、野生の齧歯類(げっしるい:ネズミなど)が保菌し、ネズミから脱落した”マダニ”に咬まれることにより、人も感染します。このウイルスに感染した動物(ヤギ等)から生産された乳製品からうつることもあります。人から人へは滅多にうつりませんが、まれに輸血や母乳からうつることがあります。

感染してしまった2/3くらいの人には何の症状もおこりませんが、1/3の人は4~28日間の症状のない期間があった後、頭痛、筋肉痛、倦怠感や発熱が起こります。そのまま治る場合もありますが、悪化すると、脳に障害が出るようになり、呼吸ができなくなることがあります。重症型の場合には死亡することがあります。ダニ脳炎ウイルスに対応する抗ウイルス薬はありません。解熱剤で熱を下げたり、抗痙攣薬で対症的に対応するしかありません。

ヨーロッパ(特に東ヨーロッパ長期滞在)・ロシアでのアウトドア活動(トレッキング・登山)は、ダニ咬傷によるダニ媒介脳炎のリスクがありますので、渡航前の予防接種が推奨されます。

ダニに咬まれないよう、虫刺され対策を行い、殺菌されていない乳製品(ヤギ等)の摂取は避けましょう。

ワクチンの基本接種3回を完了すれば3年間は十分な免疫が維持され、その後は3年後に追加接種1回を行います。それ以降は5年毎に追加接種をします。12歳未満の接種者は、より有効性が高く、一方60歳以上では抗体陽性率がやや低下します。

若年層の時期に喘息が消えるのは男性ホルモンのせい         02/19/25

小児期に発症した喘息が完全に消えて無くなることはなく、一般に10歳代から20歳代にかけて症状が鎮静化して一見完治したかのように見えますが、その後どこかで、長引く咳・長引く喉のイガイガ感・長引く喘鳴や喀痰という形で再燃するのが普通です。したがって、親子で同じ時期に長引く咳が生じ、家庭内で風邪が蔓延しているように見えることもしばしばです。

思春期から若年層の時期に喘息が消えるのは、アンドロゲン(男性ホルモン)の分泌が男女ともに最も多くなる時期だからです。アンドロゲンの分泌は20歳前後がピークで30歳以降は徐々に低下していきます。アンドロゲンは、ニキビ・体毛の成長・筋肉の発達を引き起こすばかりでなく、気道アンドロゲン受容体(AR)に作用して、喘息の炎症を抑制することがわかっています。実際に、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)という男性ホルモンの気道吸入は喘息を抑えるのに有効でした。

喘息は思春期以降、男性よりも(アンドロゲンの少ない)女性に多くみられることになります。そもそも喘息患者の気道AR発現は男女問わず健常者よりも低いことが報告されています。一方、喘息と気道AR発現との関連性は、閉経後女性においては認められず、またアンドロゲンが少なくなっている閉経女性に対するステロイド投与はアンドロゲン分泌をさらに抑制することになり、これらが相まって閉経後女性の喘息に対して吸入ステロイドの有効性が下がる原因になっているのではないかと考えられています。思春期前の小児においても、喘息と気道AR発現との関連性はなく、女児よりも男児に喘息が多く認めらますが、これは気道の発育障害の違いによるものと説明されています。

Androgens Alleviate Allergic Airway Inflammation by Suppressing Cytokine Production in Th2 Cells; The Journal of Immunology
Association Between Asthma and Reduced Androgen Receptor Expression in Airways; Journal of the Endocrine Societye

中年女性の喘息は湿性咳嗽が多く、吸入ステロイドが効きにくい。    02/14/25

閉経後の女性は慢性的な咳に悩まされることが多い。香水、漂白剤、冷気などの環境刺激物を吸い込むと、皮膚にくすぐったいような刺激感を感じたり、のどが痛くなったり、咳が出たりするような、顕著な過敏性を訴えることが多い。咳を媒介する神経経路の感受性の亢進を示す長引く咳嗽を訴える患者の3分の2が女性であり、50~60歳代の有病率が最も高いという疫学的特徴がある。

喘息には明らかな性差がある。13歳未満の小児では、男児に喘息が多い一方(有病率65%)、成人では、女性の方が男性より明らかに多い(有病率65%)。生涯を通じて、女性は男性よりも喘息を発症しやすく、重症化する可能性が高い。そして、女性の喘息においては、アトピー型が少なく、ステロイドによる治療効果が低い人が多く、ステロイド不応性喘息の肥満患者では女性が圧倒的に多い。

喘息を持つ女性の20~40%が、月経前の黄体期または月経前後に症状が出て、呼吸機能が低下することが多い。閉経後の喘息女性(少なくとも6ヵ月間無月経)は、閉経前よりも肺機能が低下し、喘息症状が悪化していました。ホルモン避妊薬は喘息の発症率を低下させ、一方男性ホルモン薬は、喘息の発症率を低下させ、喘息の症状を軽減する可能性がある。

閉経後のホルモン変化は、肺機能や気道粘膜に影響を及ぼし、咳反射の過敏性を引き起こし、咳嗽を起こしやすくしている可能性があります。
エストロゲンが不足することによる皮膚、結合組織、粘膜の変化は、呼吸器粘膜などの細胞にも起きている可能性がある。エストロゲンの欠乏は、膣上皮の萎縮を引き起こすのと同様に、気道粘液や繊毛の減少や変化、呼吸器組織の感受性の変化を引き起こし、肺機能の低下や慢性咳嗽を引き起こす可能性がある。

喘息発症に関わる免疫経路におけるいくつかの性による違いがある。ステロイド治療が有効であるT2炎症型は、女性では男性よりも少ない。とりわけ中年女性、更年期以降の女性の場合は、非T2炎症型が比較的多く、結果的に好中球浸潤、粘液産生を多く生じるため、喀痰の多い湿性喘息が多く、ステロイド吸入の効果が男性に比べると劣る。一方、長時間作用性ムスカリン拮抗薬であるチオトロピウムの効果は、男女間で違いはなかった。抗ロイコトリエン薬は男性に比べて女性での方が有効性が高い。

Sex and gender in asthma;Eur Respir Rev.
Chronic cough in postmenopausal women and its associations to climacteric symptoms;BMC Womens Health

よく風邪ひく子供は、親子ともに喘息の遺伝子を持っている       01/24/25

CDHR3、GSDMA、GSDMBという喘息リスク対立遺伝子は風邪の発症率の上昇と関連し、CDHR3遺伝子のリスク対立遺伝子はライノウイルス感染と関連していた。GSDMA、GSDMB、IKZF3、ZPBP2、ORMDL3遺伝子の喘息リスク対立遺伝子は、幼児期の喘鳴疾患(喘息様気管支炎という曖昧な病名で呼ばれる病態)と関連し、特にライノウイルス陽性の喘鳴疾患と関連していた。
このように、喘息リスク対立遺伝子は、乳幼児期における風邪の発症率の増加と関連し、ウイルス性疾患、特に最も頻度の高い風邪ウイルスであるライノウイルス誘発性喘鳴疾患のリスク増加と関連していた。このことは、乳幼児期に風邪に頻繁にかかりやすいことは、喘鳴疾患や喘息と遺伝的危険因子を共有している可能性を示唆している。

実際には、よく鼻風邪(そのほとんどはライノウイルスか、時にRSウイルスである)をひき、その度に聴診器で喘鳴が聞こえる子供の場合、その子は喘息である可能性が極めて高い。さらに、喘息リスク対立遺伝子の一部は、湿疹のそれと重なっているため、ツルツルお肌とは言えそうにない皮膚の場合には、喘息である可能性はより高まります。実際には、喘息、喘鳴が聞こえる時には、皮膚の状態が悪いことも多く、目の前に見えている皮膚の状態が気管支の内面の状態を物語っているものです。

乳幼児の喘息診断は慎重にとはいうものの、遺伝子解析の知識背景を元にすれば、1〜2度の診察で喘息診断が下せることは、乳幼児喘息に限れば、不思議でも何でもありません。(大人で発症する喘息は、幼児の喘息とは喘息リスク対立遺伝子が異なっており、さらに遺伝子以外の寄与が大きいため、喘息診断はさほど容易ではありません。)

Association of Asthma Risk Alleles With Acute Respiratory Tract Infections and Wheezing Illnesses in Young Children

Genetic Architectures of Childhood- and Adult-Onset Asthma Are Partly Distinct

身に覚えのない喘息症状の時には、熱がなくても、肺炎マイコプラズマ・肺炎クラミジアにかかっているかもしれない 12/20/24

気管支喘息は、乳幼児〜小学生までの早期発症タイプと12歳〜成人の遅発性発症タイプに分けられます。どちらの発症タイプにおいても、マイコプラズマにかかることによって喘息を発症していることが強く示唆されています。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎といったアトピー素因を元々持っているかどうかに関係なく、マイコプラズマ肺炎菌感染によって、子供でも大人でも急に偶発的に気管支喘息を発症することが報告されています。それまで喘息らしい症状を全く経験したことのない50歳ぐらいの人が、急に発熱のない喘鳴や持続する咳を発症した場合、実はそれはマイコプラズマによる気管支炎や肺炎の症状であるかもしれないということです。
同様に、遅発性発症タイプの大人の気管支喘息において、肺炎クラミジア菌にかかった後には喘息を発症することが有意に多く、肺炎クラミジア菌暴露と喘息性気管支炎の有病率との間に用量反応関係があることが明らかにされています。

Incident asthma and Mycoplasma pneumoniae: A nationwide cohort study

Chlamydophila pneumoniae and Mycoplasma pneumoniae A Role in Asthma Pathogenesis?

大人の遷延性細菌性気管支炎(Protracted Bacterial Bronchtis in Adult)(PBB)  12/05/24

気管支や肺の中は、完全無菌状態でないのが普通であることがわかってきています。腸内細菌が住んでいる腸のように、気管支肺の中にも細菌の集落(細菌叢)がバイオフィルムを作って、気管支の繊毛細胞や免疫細胞群との間で、通常は均衡の取れた状態を保っているのではないかと考えられています。しかし、生まれつき免疫力が弱かったり、気管支壁の細胞の繊毛の働きが悪かったり、風邪をこじらせて気管支壁細胞の回復が遅れてしまったりすると、細菌叢との力関係が悪くなり、炎症が慢性化してしまう状態に陥る可能性があります。

成人のPBBは、先行する呼吸器ウイルス感染に罹患することで持続性の咳を発症する。咳の罹病期間は1.4〜8.5ヶ月(中央値3ヶ月)であり、多くは8週間以上持続していました。痰のとても多い咳嗽、(多くの場合、特に病原体を検出できないにも関わらず)黄色の痰(好中球性の気道炎症による結果であり、また喀痰リンパ球は増加する)、喉に痰が引っかかってなかなか取れない感覚が特徴的な症状である。これらの症状は臨床的診断に有用であるとされている。
一方、喘息とは異なり、ほとんど喘鳴を認めず、季節性もない。胸部レントゲン、CT上、気管支拡張症を認めない。もちろん、喘息、COPD、喫煙といった他の慢性咳嗽の原因が認められないことによって定義される。

成人PBB患者の大半は女性であり(気管支拡張症や慢性咳嗽と同様に、咳嗽反射感受性の性差があることと関連している)、中年優位(40代後半〜60代後半)であった。

成人PBBのうち28%はその後、放射線学的な気管支拡張症を認めたとする報告もあり、PBBと気管支拡張症は、気管支内感染と炎症という同じ基礎過程の異なる部分を表しているのかもしれないと考えられている。

Persistent and Recurrent Bacterial Bronchitis—A Paradigm Shift in Our Understanding of Chronic Respiratory Disease

Clinical characteristics of protracted bacterial bronchitis in adults

Persistent bacterial bronchitis in adults – a precursor to bronchiectasis?

クラミジア肺炎の胸部レントゲン像      10/23/24

現在、マイコプラズマ肺炎1000件に対してクラミジア肺炎3件の割合で検出されています。クラミジア肺炎の検査が行われることは現場ではかなり少ないので、実際にはもっと多いはずです。特に胸部X線像で、気管支肺炎パターンまたは網状影が認められた場合で、かつ、比較的たくさん行われているマイコプラズマの検査が陰性の場合には、その可能性が高まります。

肺炎クラミジアによる疾患としては、急性上気道炎、急性副鼻腔炎、急性気管支炎、また慢性閉塞性肺疾患(COPD)を主とする慢性呼吸器疾患の感染増悪、および肺炎である。特に副鼻腔炎はライノウイルスの流行だけでは説明がつかないほど最近非常に多く見られています。(副鼻腔炎に対して一々抗体検査をするわけにはいかないので原因は不明ですが)

肺炎クラミジアは 市中肺炎の約1 割に関与するが、発症年齢がマイコプラズマ肺炎と異なり、小児のみならず、高齢者にも多い。他の細菌との重複感染も少なくない。家族内感染や集団内流行もしばしば見られ、集団発生は小児のみならず高齢者施設でも報告されている。感染既往を示すIgG 抗体保有率は小児期に急増し、成人で5〜6 割と高い。この抗体には感染防御の機能はなく、抗体保有者も何度でも感染し発症し得る。感染から症状発現までの潜伏期間は3〜4 週間で、接触が密接な者の間で小規模に緩徐に広がる。肺炎発症の機序としては、上気道に初感染し下降して肺炎に至るものが主とされる。

胸部X線陰影の分布は主として中下肺野に多く、複数の部位に認めることもある。小葉中心性粒状影や細葉性のすりガラス影などの気管支肺炎パターンが基本形であり、他の病原体に比し網状影や気管支拡張の頻度が高いことが特徴的であるとされるが、実際には非特異的であり、間質性、網状結節性、気管支血管束肥厚、無気肺など、さまざまなX線像パターンを伴う両側性の過膨張およびびまん性浸潤が認められる。進行すると非区域性の気腔性肺炎パターンもとりうる。胸水貯留および肺葉浸潤は認めにくい。

国立感染症研究所
国立感染症研究所IDWR
American Journal of Roentgenology
日本内科学会誌

マイコプラズマの胸部レントゲン像    10/19/24

肺炎マイコプラズマは、線毛を有する気道上皮の粘膜に親和性が高く、気道表面を遊走し増殖する。このため,比較的中枢気道から末梢気道まで連続的に炎症を起こし、気管支に直交する側枝にも炎症が波及する。気道上皮傷害が強く、咳受容体の刺激による強固な咳が特徴的な症状となる。
したがって、レントゲン所見は気管支肺炎パターンであり、比較的中枢側から末梢にかけて連続性、区域性の分布を示す。CTでは連続性の気管支壁肥厚、小葉中心性の淡い粒状影や分岐状影(Tree-in-bud sign および GGO(ground-glass opacity))(したがって、胸膜直下の末梢気道,肺野は比較的保たれる)を示し、気管支透過像を有しない頻度が高いが、気腔性肺炎パターンを思わせる末梢肺へおよぶ広範囲の浸潤影やすりガラス影を認めることもある。したがって、胸部レントゲンでは、網状粒状すりガラス状混濁や気管支血管束の肥厚や気管支周囲カッフィング、肺門周囲特にS6、S3領域に区域性に分布する融合性結節影や気管支血管束に沿った浸潤影を認めることもある。実際の胸部レントゲンの読影においては、肺門部の浸潤影や網状影・すりガラス影の有無は、心・横隔膜・縦隔中央陰影のシルエットサインの有無を確かめつつ慎重に評価する必要がある。

呼吸器感染症の画像診断:日本内科学会誌
Diagnostic significance of HRCT imaging features in adult mycoplasma pneumonia: a retrospective study:Nature
Correlation between Radiological and Pathological Findings in Patients with Mycoplasma pneumoniae Pneumonia:Frontiers in microbiology
Chest imaging classification in Mycoplasma pneumoniae pneumonia is associated with its clinical features and outcomes:Respiratory Medicine

4歳以下に、マイコプラズマは、ほぼいませんから  10/16/24

家族、兄弟がマイコプラズマにかかった(しかも検査もせずにの場合もあるが)からと言って、1歳の子がマイコプラズマの検査をしてくださいと頼まれることがありますが、おそらく乳幼児の特殊な免疫バランス環境のために、1歳から4歳までは、大流行時であっても、マイコプラズマにかかる子は極めて稀で、特に1歳でマイコプラズマが検出されることは実際にはまずありません。マイコプラズマが発症するのに適した免疫バランス環境が必要であり、5歳以上中学生までぐらいがマイコプラズマに最も親和性が高いのです。(コロナウイルスが体内に侵入しても、やはり乳幼児では、発症しないかまたはかかったかどうかわからないほどの軽症で済んだ一方で、小学生以上になると明らかにコロナの様々な症状を引き起こし、時に重症の免疫過剰反応状態に陥ることもありました。その理由として、おそらく免疫寛容と呼ばれる抑制系免疫が乳幼児ではまだ強く働いているせいか、または強力な自然免疫系が作用してウイルスを駆除してしまうからと想定されたのですが、マイコプラズマでも同様の現象が起きている可能性があると考えられます。)

Persistent elevation in incidence of pneumonia in children in England, 2023/24:Eurosurveillance
Immune response plays a role in Mycoplasma pneumoniae pneumonia:Frontiers in Immunology

海外で評価されている学術研究

- Detailed Analysis of Immune Tolerance Mechanisms to SARS-CoV-2 in Children Is Needed (2021)『小児コロナ免疫についての論文』

- Early activation does not translate into effector differentiation of peripheral CD8T cells during the acute phase of Kawasaki disease (2010)『川崎病における免疫反応についての論文』

- Tenderness over the hyoid bone can indicate epiglottitis in adults (2006)『急性喉頭蓋炎を見つけるコツを発見した論文』

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