OUR MISSION

私たちのミッションは、
世の中に元気を拡散させること。

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治すお手伝いをすること。
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ここでの小さな出会いと
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回復への起点になること。
そして、前向きな気持ちと
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私たちはいつもと同じように
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COPD、気管支拡張症の増悪は定着菌によるもの         09/02/25

過去の研究および現在のガイドラインでは、COPD、気管支拡張症、慢性気管支炎の増悪は主にライノウイルス、メタニューモウイルス、インフルエンザ、パラインフルエンザなどのウイルスによって引き起こされ、細菌や大気汚染などの他の炎症原因がわずかに関与しているとされていた。

しかし、この研究では、緑膿菌またはインフルエンザ菌による慢性気道コロニー形成のあるCOPD集団において、増悪時にウイルス感染の証拠は見つからず、むしろ増悪時よりもベースライン時にウイルスが多く見つかった。さらに、増悪の57.7%つまり半数以上で症状悪化の原因となる新たな細菌またはウイルスが検出されなかった。これは、緑膿菌やインフルエンザ菌といった病原体による慢性気道コロニー形成が、増悪時に存在する炎症を引き起こし得ることを示唆している。緑膿菌やインフルエンザ菌による慢性コロニー形成は、炎症、免疫調節異常、酸化ストレスを引き起こすことが知られている。

研究対象のCOPDと気管支拡張症の患者の85%に緑膿菌が、45%にインフルエンザ菌が慢性気道コロニーを形成していた。他に、18%に肺炎球菌、13%にモラクセラ・カタラーリス、3%に黄色ブドウ球菌が定着菌としてコロニーを形成していた。このように慢性気道感染症のマイクロバイオーム。プロファイルは、多様性の低下と構成微生物の偏移が特徴である。(一方、健常者のマイクロバイオームでは、多様な細菌、主にプレボテラ属、ベイヨネラ属、および連鎖球菌属が少量存在する。)

COPDまたは気管支拡張症による慢性気管支炎の増悪のうち、新な細菌が19.8%に、新なウイルスが15.5%に、新たな細菌とウイルスの両方が7.0%に検出された。一方、57.7%つまり増悪の半数強からは新たな感染はなく、定着微生物またはその他の増悪原因に関連していた。

増悪患者のうち8割近くで緑膿菌が検出されたが、そのうち新規感染による検出は1%未満であり、ほとんどは定着菌による持続感染であった。黄色ブドウ球菌は増悪患者の3%で検出されたが、そのうち1/3は持続感染であった。肺炎球菌は増悪患者の20%で検出されたが、その半分が新規感染検出、半分は定着菌による持続感染であった。モラクセラ・カタラーリスは増悪患者の17%に検出されたが、新規感染検出分が10%、定着菌検出分が7%だった。インフルエンザ菌は増悪患者の1%で新規感染として検出され、増悪患者の46%で持続感染として検出された。

このように、緑膿菌またはインフルエンザ菌による慢性気道コロニー形成のある慢性気管支炎において、増悪の半数以上で症状悪化の原因となる新たな微生物が検出されなかった。新規細菌感染が示されたのは増悪の26.8% にすぎなかった。

ライノウイルス、パラインフルエンザ 3 型、コロナウイルス OC43 がいずれも対象の5%以下にベースラインウイルスとして検出され、インフルエンザ A 型、メタニューモウイルス、コロナウイルス HKU1、RS ウイルスが増悪時に検出されたが、インフルエンザA型以外は数%の検出率にすぎなかった。増悪の15.5%がこれら呼吸器ウイルスの検出と関連しているにすぎなかった。

これらのデータは、細菌定着を有するCOPDまたは気管支拡張症または慢性気管支炎患者が増悪を呈した場合、定着持続細菌感染に焦点を当てた治療が適切であることを示唆している。症例のほぼ3/4において増悪時点で新たな細菌は認められず、過去の検体に基づく治療が、大多数の増悪において有効である。

Respiratory Pathogens at Exacerbation in Chronic Bronchitis With Airway Bacterial Colonisation: A Cohort Study

小児喘息関連中葉症候群                  08/31/25

中葉症候群(MLS)は、肺の中葉が縮小することで生じる長期的な無気肺を指す用語であり、中葉の慢性的な虚脱と気管支拡張を呈する肺の疾患です。右中葉と左舌下葉は、側副換気不良を起こしやすい解剖学的特徴を有するため慢性的な虚脱を起こしやすい部位です。患者は男性より女性に多く、女性は男性よりも発症年齢が高い。

中葉の反復性虚脱や肺炎から気管支拡張症に至るまで、様々な病理的臨床的病変が見られます。MLSは閉塞型と非閉塞型に分類されます。MLSのわかりやすい原因は、腫瘍またはリンパ節腫大による気管支気道への外因性圧迫や肉芽種性感染症による気管内病変による閉塞および鬱血により、慢性炎症、気管支拡張症、再発性肺炎および瘢痕形成を引き起こす閉塞型です。一方、MLSの大多数は非閉塞性型です。成人および小児において、右中葉気管支または左上葉舌部が損傷されていないにも関わらず再発性肺炎を呈し、喘息、気管支炎、嚢胞性線維症を合併することがよくあります。

MLSは、胸痛、持続性咳嗽、多量の痰、喀血、呼吸困難、膿性痰、再発性肺炎の兆候など、複数の症状を呈することがあり、そのうち慢性咳嗽と痰が最も多く、喀血が最も少ない症状です。

小児では、特に喘息またはアトピーの既往歴を持つ患者に見られることが多く、急性喘息で入院した小児におけるMLSの発生率は5~10%とされています。この報告による右中葉症候群(MLS)の小児患者4名は、持続性湿性咳嗽、呼吸困難、および反復性喘息増悪の症状を呈していました。全例が閉塞型であり、喘息を合併し、粘液が気管支を閉塞していました。X線検査では右中葉症候群(MLS)に一致する所見が確認され、気管支鏡検査では右中葉気管支を閉塞する粘液栓子と浮腫性気道が明らかになりました。気管支拡張薬、抗生物質、およびコルチコステロイドによる治療により、症状は改善し、無気肺も消失しました。

MLS症候群の治療は、根本的な原因への対処に重点が置かれます。感染症が原因の場合は、感染症を効果的に治療するために抗生物質が処方されることがあります。気道を広げ、呼吸を改善するために気管支拡張薬が使用されることもあります。体位ドレナージ(肺からの粘液排出を促す体位をとる技術)は、気道の浄化を促進するために推奨される場合があります。右中葉切除術が行われることもあります。

Unveiling the complexity of right middle lobe syndrome: a case series highlighting the association with asthma

同じパラインフルエンザウイルスでも人種によって違う肺炎の形をとることがある 08/28/25

cotton rat(ワタオネズミ)は Sigmodon(シグモドン)属に含まれるげっ歯類で、研究モデル動物(特に呼吸器ウイルス研究:RSウイルス、パラインフルエンザウイルスなど)としてもよく利用されます。その中で Sigmodon hispidus(hispid cotton rat) と Sigmodon fulviventer(fulvous cotton rat) の両者はシグモドン属の中でも特に近縁で、分子系統解析では姉妹群関係にあります。
S. hispidusは、北米南東部から中米に広く分布、毛が「hispid(剛毛状)」で粗い印象、体色は灰褐色〜黄褐色。一方、S. fulviventerは、主にメキシコ高地や南西米国に分布、腹部がより黄色味「fulvous(黄褐色)」がかっているが、体毛は S. hispidus よりも滑らかで淡色傾向。
互いに非常に近縁ですが、分類学的には両者の遺伝的距離は 5–7% 程度とされ、別種として扱われています。

これら二種のネズミに、ヒトパラインフルエンザウイルス3を感染させると、感染後2日目から5日目まで鼻腔および肺でウイルスは増殖し、感染性ウイルスは8日目にかけて排除されていった。鼻粘膜上皮では、ウイルス複製ではわずかな組織学的変化しか生じなかった。決定的な違いは、肺病変の起こり方でした。
S. hispidus の肺では、細気管支炎が引き起こされ、細気管支周囲リンパ球細胞浸潤は感染後6日目にピークに達し、間質性肺炎の要素はわずかに存在するのみだった。対照的に、S. fulviventer の肺では、間質性肺炎が引き起こされ、病変は感染後6日目までに最大限に達し、細気管支周囲リンパ球浸潤は最小限にとどまっていた。
両種のネズミの肺病変は感染後9日目にはほぼ治癒し、感染後16日目には感染の痕跡すらなくなっていた。

ヒトが実際にパラインフルエンザウイルスにかかっても、大抵自然治癒してしまって、ネズミと同じように跡形なく治ってしまうので、肺の中でどのような出来事が起きたかどうかはわからないままです。また、パラインフルエンザウイルスの有効な検査キットが存在しない条件の下、一定の流行状況と臨床症状によって推測するしかない状況で、レントゲンで肺炎像を認めた場合に、そのパターンが人種によって、あるいは個体によって一定の傾向がないとすると、一般外来における肺炎の原因の絞り込みはなかなか難しいということになります。

Pathogenesis of human parainfluenza virus 3 infection in two species of cotton rats: Sigmodon hispidus develops bronchiolitis, while Sigmodon fulviventer develops interstitial pneumonia

急性喉頭炎       08/24/25

急性喉頭炎の病因は、感染性と非感染性に分類できます。感染性の方が一般的で、通常は上気道感染症に続いて発生します。多い順に、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、インフルエンザなどのウイルス性病原体は、いずれも潜在的な病原体です。ウイルス性喉頭炎では、細菌による重複感染が起こることがあります。これは通常、症状発現から約7日後に発生します。

最もよく見られる細菌は、多い順に、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスです。ワクチンで予防可能な熱性発疹性感染症である麻疹、水痘、さらに百日咳も急性喉頭炎の原因になります。真菌感染による喉頭炎は、免疫不全者や吸入ステロイド薬を使用している患者では、慢性喉頭炎として発症することがあります。

成人における急性感染性喉頭炎は、上記のウイルスによって引き起こされる場合が最も多く、小児の急性喉頭炎でも同じウイルスが原因となることが一般的です。ただし小児の場合は、パラインフルエンザウイルス(最も一般的にはパラインフルエンザ1型)によるクループ(喉頭気管支炎)も鑑別が必要です。クループは、単独の音声症状を呈する場合もありますが、典型的には特徴的な「犬吠様」咳嗽を伴い、吸気性または二相性喘鳴へと進行することがあります。

急性非感染性喉頭炎は、声帯外傷/乱用/誤用、アレルギー、胃食道逆流症、喘息、環境汚染、喫煙、吸入損傷、または機能障害/転換性障害によって引き起こされます。

声の誤用や乱用による喉頭炎は、イベント後のコーチ、ファン、選手によく見られます。また、声楽家、特に最近パフォーマンスの強度や頻度が増した人や、正式な発声指導や歌唱指導を受けていない人に起こります。胃食道逆流症(GERD)、特に食道外GERD(咽喉咽頭逆流症)は、喉頭炎の原因として多い。急性または慢性、断続的に現れることもあります。GERD患者の3分の1は喉頭/声の症状のみを経験します。GERDの既往歴、頻繁な咳払いや咳、咽頭ゴロゴロ感、声の荒さがあります。歌手の場合は、高音域が出なくなることで気づかれます。

喘息では、慢性のステロイド吸入器の使用により、特にステロイド吸入器使用後のうがいを怠っている場合、真菌性喉頭炎を起こすことがある。咳喘息では、繰り返す咳により声帯に反復性の損傷を引き起こし、急性喉頭炎によって声が変わることがあります。季節性および環境性アレルギー、季節性または持続性の大気汚染などの環境的原因は、声帯を刺激し、急性喉頭症状を誘発することがあります。喫煙やその他の薬物使用による意図的な吸入であれ、意図しない暴露であれ、有害物質の吸入は喉頭を刺激し、声帯の浮腫や声の症状を引き起こすことがある。人によっては、香水、コロン、洗剤、または日常生活でよく使用されるその他の芳香剤に敏感な場合もあります。機能性発声障害は、転換性障害群のことであり、幅広い音声喪失症状を呈します。仕事や愛する人を失うといった最近の大きな生活ストレスが誘因になっています。

Acute Laryngitis

(ニンバス流行時)大人は急性喉頭炎、子供はクループ        08/24/25

現在流行中のコロナウイルスは、オミクロン系統のNB.1.8.1株とされています。オミクロン系統への変異により、主な病巣が下気道から上気道に移ったため、重症肺炎を引き起こすことが少なくなり、代わりに咽頭や喉頭が主な病巣になりました。時々厄介な症状を引き起こします。急性喉頭炎とクループです。

急性喉頭炎と診断された患者の大多数は男性であり、ワクチン接種を完了していた。喫煙者はいなかった。全患者がCovidに初めて感染し、急性嚥下痛を呈していた。特徴的な内視鏡所見は、主に声門上部に白色の剥離不能である病変を伴う喉頭の発赤であった。梨状窩への唾液貯留は、患者の入院の独立した予測因子であった。挿管や気管切開を必要とした患者はおらず、全員がステロイドと抗生物質による全身治療に反応した。

潰瘍性喉頭炎は、典型的には重度の咳を伴う疾患の後に発症する特徴的な病態です。声帯の粘膜潰瘍が特徴的な診断所見であり、主症状である重度の嗄声の原因になっている。この疾患は咳のしすぎによる声帯の外傷である。治療は、発症時に咳が残っている場合はそのコントロールと、逆流性食道炎治療薬、経口ステロイド、完全または部分的な声の安静など、一連の抗炎症処置になります。抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、またはこれらの併用も使用される場合があります。臨床経過は長期にわたるのが一般的で、潰瘍の治癒には6週間以上、多くの場合数ヶ月かかります。症例数が少ないため、上記の介入のうちどれが疾患経過の短縮に有効であるかを判断することは困難です。音声の転帰は概ね良好ですが、瘢痕性変化は粘膜の柔軟性と音声に長期的な残存影響を及ぼす可能性があります。
オミクロン変異株の蔓延に伴い、この潰瘍性喉頭炎の発生率が著しく増加していました。症状発症から受診までの平均期間は15日。全患者に発声障害が見られた。その多くはワクチン接種を完了していました。治療は、音声安静、ステロイド、抗生物質、逆流防止薬、鎮咳薬などが使用されていた。

クループは、主にパラインフルエンザウイルスによって引き起こされる急性上気道疾患です。上気道の炎症と浮腫により、小児は犬吠様咳嗽と吸気性喘鳴を呈し、呼吸困難を呈する場合もあります。5歳未満の入院患児の調査で、オミクロン波の急増時にクループ症例が急増していたことが観察されています。オミクロン波期間のクループ症例の割合はデルタ波のそれの10倍でした。

COVID-19 Omicron variant-induced laryngitis
COVID-19–Induced Acute Laryngitis: A Case Series
Increased Incidence of Ulcerative Laryngitis During Spring 2022 Omicron-Variant Wave of COVID19
Croup as a Manifestation of SARS-CoV-2 Omicron Variant Infection in Young Children

好中球性喘息        08/21/25

痰中に60%を超える好中球を有する成人喘息患者(好中球性喘息)は、高齢、男性、発症が遅い、肺疾患がより重篤な傾向があり、アトピーとの関連が少なく、呼気一酸化窒素(FeNO)レベルが低く、30ppb未満であることがよくある。(小児では、気道好中球増多はそれほど一般的ではなく、発生する場合は急性または亜急性気道感染であることが多い。)病原性を持つ可能性のある気道細菌を保有しており、一般的な喘息治療に抵抗性である。
好中球性喘息は成人全喘息症例の約20~30%(5人に1人)を占めている。喘息の増悪の大部分が非好酸球性であり、好中球増加によるものである(好中球68%、好酸球0.3%)。

喘息における肺の好中球動員は、気道汚染物質や潜在的病原細菌の存在などによって引き起こされる肺の炎症に対する「正常な」反応である。好中球は極めて重要な「第一線」の免疫応答を担い、炎症の原因に関わらず、肺に最初に動員されるエフェクター細胞の一つである。最も豊富な白血球でもあり、循環血中の白血球の70%を占めている。気道炎症部位では、好中球はインフルエンザ菌や肺炎球菌などの標的物質を貪食して退治する。

ところが、加齢によって好中球の微生物殺傷能力は低下していく。小児とは対照的に、高齢者の好中球は病原体除去の有効性が低下すると同時に、むしろ傍観者として宿主気道細胞を損傷する傾向がある。好中球性喘息の成人患者では、抗炎症機能不全と同時に、炎症誘発性メディエーターの放出増加によって、粘液過剰分泌および気道リモデリングが生じる。

小児に多い好酸球性喘息では確かに、肺炎球菌 S. pneumoniae、連鎖球菌 S. pyogenes、百日咳 Bordetella pertussis、レジオネラ Legionella pneumophila、マイコプラズマ Mycoplasma pneumoniae、クラミジア Chlamydia pneumoniaeなどの細菌性病原体に弱く、それらによる急性呼吸器感染症を罹患しやすい。しかし、急性感染症がない通常時には、好酸球性喘息患者の気道内細菌レベルは低く、ゲメラ属、連鎖球菌属、ナイセリア属など主に上気道微生物叢の一般的な構成菌であり、気道細菌多様性も保たれている。

一方、好中球性喘息では、気道内の好中球増加に伴って、宿主の免疫応答に抵抗できる少数の細菌である、ガンマプロテオバクテリア属細菌、特にインフルエンザ菌(H. influenzae)とモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、さらに連鎖球菌(S. pneumoniae)の気道内での大幅な増殖と、細菌多様性の顕著な減少が見られる。これは気管支拡張症、COPD、嚢胞性線維症など、気道好中球増多を特徴とする他の慢性呼吸器疾患のマイクロバイオーム環境と同じである。

好中球性喘息では、他の慢性呼吸器疾患と同じように、気道クリアランス障害と粘液過剰分泌の結果として好中球が気道分泌物中に蓄積すると同時に、インフルエンザ菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌といった呼吸器系日和見病原体が分泌物内で増殖し、細菌負荷の増加と細菌多様性の減少を引き起こす。気道内細菌増殖に伴う気道炎症の増加は、さらなる気道クリアランスの低下と微生物叢多様性の低下を悪化させ、慢性的な細菌定着と気道好中球増多の持続的なサイクルに入る。好中球エラスターゼは、気道粘液腺の過形成、粘液分泌、気道平滑筋細胞の増殖、気道過敏性、杯細胞化生、炎症細胞浸潤を引き起こし、慢性好中球浸潤によって持続的な気道損傷およびリモデリングが進行していく。このような慢性好中球増多および気道感染は、気管支拡張症と同じように 重症のコントロール不良喘息患者においてよく見られる。

好中球性喘息を含めた慢性呼吸器疾患全般において、加齢に伴い、機能不全に陥った好中球性炎症という環境が、気道マイクロバイオームの構成に対する選択圧となっている。対照的に、小児喘息では、好中球は有害事象との関連性が低く、小児においては好中球の病原性が低い可能性がある。好中球性喘息における気道細菌、炎症、そして好中球増加症の間の悪循環が確立するには加齢という相当な時間が必要である。

Neutrophils in asthma: the good, the bad and the bacteria:BMJ Journals Thorax

RSウイルス感染症+インフルエンザ菌叢増大→重症肺炎    08/06/25

RSウイルス感染症に感染した乳児のうち26%に、少なくとも1種類の追加ウイルスが存在していました。かなり厳格な基準を用いた検出率なのでかなり控え目な数字になっています。あらゆる年齢の小児における呼吸器感染症における複数ウイルス同時検出率が10~65%と報告されていることと一致します。 同時に、病原性の高い呼吸器細菌では、乳児の91%でモラクセラまたは連鎖球菌(肺炎球菌)またはヘモフィルス(インフルエンザ菌)が検出されました。

一般に、ウイルスの重複同時感染率は年齢とともに低下するが、乳児および幼児では成人よりもウイルスの重複同時感染率が高い。 しかし、より詳細に見れば、生後3ヶ月までの最年少児では、母親からの抗体の影響のためか重複同時感染率は低く、4ヶ月以上の年長児では保育施設への通園などの社会的接触機会の増加のため、より多くの呼吸器系ウイルスに曝露されているためなのか、重複同時感染率が高かった。

ライノウイルスは最も多く同時検出されたウイルスであり、RSウイルス感染乳児の16%で検出された。ライノウイルスはRSウイルスに次いで小児における重症肺炎を引き起こす2番目に多いウイルスであり、また健康な小児または重症肺炎のない小児では最も一般的な風邪ウイルスである。実は、RSウイルスとライノウイルスはウイルス干渉効果により、同時感染しにくいウイルス同士であり、他の報告と合致したこの数字は、ライノウイルス同時感染率としての最大公約数だと考えられる。RSウイルス感染症乳児の5%以上は他の重複感染はなかった。

RSウイルスに加えて他の呼吸器系ウイルスの重複同時感染がある場合は、集中治療および人工呼吸器の必要性が高まった。しかし、ウイルスの同時検出と重症度との全体的な相関は小さく、同時検出されたウイルスはいずれも疾患の重症度と関連していなかった。

他の報告では、ライノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、またはヒトパラインフルエンザウイルスが同時検出された5歳未満のRSウイルス感染児では下気道炎リスクが高まっていた。さらに、3歳未満の小児では、RSウイルスとライノウイルスの同時検出は、RSウイルス単独の場合よりも入院期間および酸素使用期間が長くなっていた。しかし、これらの報告における対象は、すでに併存疾患を抱える乳児が過剰に代表されているためだと考えられる。

ヘモフィルス菌(インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌)の存在は、年齢やRSウイルスの遺伝子型にかかわらず、RSウイルス感染症の重症化と有意に相関していました。インフルエンザ菌による重症化は、CD4+およびCD8+ T細胞シグネチャーの増加、Toll様受容体シグナル伝達の増強、粘膜ケモカイン(CXCL8)およびIL-17Aシグナル伝達(これらは、マクロファージおよび好中球の活性化および動員に寄与し、気管支肺胞好中球浸潤を誘導する)
と関連していました。

連鎖球菌(特に肺炎球菌)の存在と臨床転帰との間に関連性は認められなかった。しかし、他の研究では、連鎖球菌優勢の微生物叢が、RSウイルス感染症の乳児の入院リスク増加と、下気道炎発症リスク増加と関連していることが示されています。

最も多く検出された細菌であるにもかかわらず、モラクセラ属細菌は外来児や重症肺炎のない児で多く、軽症のRSウイルス感染症と関連していました。モラクセラが潜在的な保護効果、または病原性のない傍観者としての役割を果たしていることが示唆されています。

乳児は通常、呼吸器症状の有無にかかわらず、上気道に常在マイクロバイオームを保有しており、その中には病原性を持つ肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌、エンテロウイルスやコロナウイルスなどのウイルスが含まれます。健康小児でも呼吸器感染症小児のいずれにおいても、複数のウイルスは頻繁に同時検出されますが、ウイルス間の相互作用はウイルス同士の関係によって相乗的になったり拮抗的になったりします。インフルエンザ A と RS ウイルスの同時感染は、ハイブリッドウイルス粒子が形成され、中和抗体を回避して受容体指向性が強化され、重症化する可能性が示唆されています。一方、ライノウイルスはインフルエンザウイルスに干渉し、両ウイルスの同時検出の可能性は低い。生後1年間を通して、呼吸器マイクロバイオームは多様性の増加とともに絶えず変化していき、モラクセラ属、ヘモフィルス属、またはレンサ球菌属の定着と肺炎球菌感染症は、ウイルス性呼吸器感染症と関連していることが示されています。

Targeted metagenomics reveals association between severity and pathogen co-detection in infants with respiratory syncytial virus: Nature

細菌とウイルス相互作用のメカニズム        08/03/25

インフルエンザパンデミックにおけるウイルスと細菌の重複感染の歴史的背景から、一次ウイルス感染が二次細菌感染の発生を促進し、下気道感染症につながるという、とても偏向した見解が広まっています。しかしながら、臨床研究では一次感染と二次感染を区別し、重複感染の臨床的意義を明らかにすることは困難です。いくつかの実験モデル研究では、ウイルス感染の次に細菌感染が成立するという位置方向性の関係ではなく、ウイルス感染と細菌感染との間には双方向の相互作用メカニズムがあることが示唆されています。例えば、ウイルス感染による呼吸器上皮の破壊、あるいは細菌のクリアランスを低下させる、あるいは細菌の付着を増加させるといった、ウイルスによる二次細菌感染の促進に対する関与ばかりではなく、細菌感染自体が抗ウイルス免疫への干渉を引き起こしたり、類似の機能を持つ病原性因子による相乗作用や補完作用などを通じて、二次的なウイルス感染を促進する可能性があります。

1.ウイルスによる二次的な細菌感染の促進
細菌クリアランスの低下
感染に対する第一線の防御機構である呼吸器上皮は、粘液繊毛クリアランスと細胞間接合の維持を通じて細菌の付着を抑制し、細菌受容体へのアクセスを制限します。一次的なウイルス感染が呼吸器上皮を破壊し、細菌クリアランスの低下につながります。ライノウイルス(RV)、RSV、アデノウイルス、インフルエンザに感染した細胞は粘液繊毛機能障害を引き起こし、その結果 S. pneumoniaeやH. influenzaeなどの細菌の排除が減少する。

ウイルス感染後の自然免疫細胞の調節も、呼吸器における細菌のクリアランスを低下させます。宿主の自然免疫応答のうち、肺胞マクロファージは正常気道における主要な細胞集団であり、呼吸器病原体に対する第一線の防御を形成します。インフルエンザ感染後に肺胞マクロファージを介した貪食作用が欠損し、S. pneumoniaeのクリアランスが阻害されることが示されています。インフルエンザとS. pneumoniaeの同時感染も、マクロファージの寄り付きが阻害され、細菌のコロニー形成が増加することが示されている。インフルエンザ感染により、感染部位への自然免疫細胞の動員が減少し、結果として細菌負荷が劇的に増加することが示されている。

細菌付着の増加
呼吸器上皮細胞へのウイルス感染は、細菌の宿主細胞への付着を促進する。先行するRSウイルス感染によってS. pneumoniaeの上皮細胞への付着が促進されました。RSウイルスはS. pneumoniaeに直接結合できます。 RSウイルス、パラインフルエンザウイルス(HPIV)、インフルエンザウイルスは、インフルエンザ菌と肺炎球菌の生きた細胞株への接着を促進した。RSVビリオンは肺炎球菌とインフルエンザ菌に直接結合し、細菌と上皮細胞の間の直接的なカップリング粒子として作用することで、細菌による定着を増やし、細菌の侵襲性を高めることが示されている。RSV感染中、宿主細胞表面のウイルス糖タンパク質は細菌接着の追加的な受容体として機能します。呼吸器ウイルスは、細菌が結合できる宿主表面タンパク質の発現を増加させることもできる。インフルエンザウイルスおよび肺炎球菌の研究では、ウイルスのノイラミニダーゼ活性によって細菌付着のための宿主細胞受容体が露出される。RVが感染した鼻粘膜上皮細胞には S. aureus、S. pneumoniae、H. influenzaeの付着が有意に増加した。また、ウイルス媒介性上皮損傷が基底膜および細菌付着のための新たな受容体の露出につながる可能性もある。

2.細菌による二次ウイルス感染の促進

ウイルス感染が細菌の増殖を促進するという一方通行の見解は、小児にはそれほど当てはまらない。発展途上国では、肺炎球菌の保菌率は成人で約4%であるのに対し、小児では50%を超え、5歳未満の小児で最大80%に達する。ヒトメタニューモウイルス(hMPV)のセロコンバージョン率は、S. pneumoniaeの鼻咽頭保菌率に比例していた。気管支上皮細胞に S. pneumoniaeを感染させると、hMPV感染感受性が上昇した。肺炎球菌結合ワクチンの普及が、小児における呼吸器ウイルス肺炎の31%を予防したことが示されている。これらは、細菌感染が二次ウイルス感染を促進することを裏付けています。

実験モデルでは、S. pneumoniaeのような細菌曝露後のほうがインフルエンザウイルス感染時のウイルス量が多いことが示されている。別のマウスモデルによれば、肺炎球菌曝露後にインフルエンザウイルスを感染させると死亡率100%だったが、インフルエンザウイルスを先に感染させた後に細菌感染させると生存率が向上しました。細菌が宿主細胞へのウイルス付着を促進するさらなる証拠として、細菌リポペプチドの添加により上皮細胞へのRSウイルスおよびhMPVの感染が促進されたことが示されている。インフルエンザ菌もまた、気道上皮細胞へのライノウイルス(RV)の結合を増強したことが示されています。

さらに、ウイルスは微生物環境を利用して免疫クリアランスを逃れる能力がある可能性も示唆されており、ウイルス感染における常在微生物叢の重要性が強調されています。

Viral-Bacterial Interactions in Childhood Respiratory Tract Infections: Nature

小児におけるウイルス・細菌重複感染エビデンス      08/03/25

呼吸器系におけるウイルスと細菌の重複感染の最も優れた、そして最も研究されている例はインフルエンザウイルスです。インフルエンザウイルスと細菌の重複感染は、成人と小児の両方で十分に報告されており、疾患の重症化との明確な関連性が示されていることは前回記しました。

RSウイルス感染症はウイルスと細菌の混合感染に関与しており、RSウイルスに感染した小児における混合感染率は17.5~44%に達すると報告されています。RSによる重症細気管支炎の小児では、乳児の下気道分泌物の42%から細菌が分離されており、同定された細菌の中で最も多かったのはインフルエンザ菌と黄色ブドウ球菌であり、細菌混合感染した小児は細菌性肺炎のリスクが高かった。小児の市中肺炎の39%がウイルスと細菌の混合感染を示し、そのうちRSウイルスと肺炎球菌の組み合わせが最も多く、症例の33%を占めていた。インフルエンザと同様、RSV と S. pneumoniae の感染はともに冬季にピークを迎え、RSV は S. pneumoniae の季節的な増加と同じ動きを辿ります。RSV と細菌の同時感染は、RSV 単独よりも重症度が高い。しかし、いくつかの臨床研究では、RSV に感染した小児における細菌の同時感染率が 2% 未満であるとしている。RSウイルス感染症で入院した乳児を対象とした研究では、細菌の重複感染はわずか0.6%にすぎないとする報告もあります。

ライノウイルス(RV)もまた、ウイルスと細菌の重複感染に関与することが多い。侵襲性肺炎球菌感染症の小児の34%にウイルスの重複感染が認められ、そのうち25%がインフルエンザウイルス、21%がRVであった。ウイルスの重複感染を認めた小児は、ウイルスの重複感染を認めなかった小児よりも重症だった。 市中肺炎の小児では、ウイルスと細菌の混合感染が66%で認められ、そのうちRVとS. pneumoniaeの組み合わせが最も多く、症例の約7%を占めました。さらに、治療に失敗した症例はすべてウイルスと細菌の混合感染であったと報告されています。RVに感染した小児のうち8%で認められた細菌の混合感染がICU入院の増加と関連していました。

他にも頻度は低いものの、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染はS. pneumoniaeとの細菌の混合感染が多いことが示唆されています。肺炎球菌ワクチンの普及により、hMPV感染の発生率と臨床的肺炎の発生率が低下しています。これは、hMPV関連の入院のかなりの割合が、肺炎球菌結合ワクチンの接種によって予防できる可能性があることを示唆しています。侵襲性肺炎球菌感染症の小児の21%でアデノウイルスの混合感染が確認されました。関与する特定の病原体とは関係なく、呼吸器ウイルス全体の発生率と呼吸器細菌感染症の発生率との一致が認められています。臨床研究では、小児の下気道感染症ではウイルスと細菌の同時感染が一般的であることが確認されていますが、ほとんどの研究で対照群が存在しないため、同時感染の臨床的意義を解明することは困難です。

Viral-Bacterial Interactions in Childhood Respiratory Tract Infections: Nature

共細菌感染している呼吸器ウイルス感染症は結構多い      08/03/25

呼吸器ウイルスと細菌の同時感染は、呼吸器疾患のある小児において頻繁に検出される。ウイルスと細菌の同時感染率は20~50%と報告から66~77%という高い割合の報告まであるが、いずれにせよ呼吸器ウイルス単独感染状態という教科書的でしかない理想と現実には大変なギャップがある。元々ウイルスと細菌はどちらも呼吸器系にマイクロバイオームとして常在感染しているため、それらの検出は感染ではなく定着を反映している可能性があるため、同時感染に関与する個々のウイルスと細菌の相対的な重要性を判断することは困難とも言えるが、同時に、教科書的に一次感染とか二次感染という区別をすること自体が人為的なバイアス操作であり、(臨床医学にはよく見られることだけれども)自然現象を都合よく理解しようとするドグマ的思考に他ならない。

1918年の「スペインかぜ」パンデミックでは5000万人以上が死亡しましたが、そのほとんどはインフルエンザ単独による直接的な原因ではなく、二次的な細菌性肺炎が原因でした。感染患者の痰、肺、血液サンプルで最も頻繁に検出された微生物はS. pneumoniae、H. influenzae、Streptococcus pyogenes、S. aureusであり、インフルエンザウイルスが病原細菌と相乗的に作用し、疾患および死亡の発生率を増加させたと考えられていました。これらの知見は、1957年の「アジアかぜ」と1968年の「香港かぜ」のパンデミックのデータによって裏付けられ、死亡率の上昇と細菌性肺炎の発生率の上昇が関連していることを示していました。 1957年と1968年のパンデミックにおいて、1918年と比較して死亡者数が少なかった主な要因は、二次的な細菌感染に有効な抗生物質の利用可能性にあると考えられています。2009年のH1N1インフルエンザウイルスによる「豚インフルエンザ」パンデミックでは、致死的な肺炎症例において細菌の重複感染が頻繁に報告され、最も多く検出された細菌はS. pneumoniaeでした。

Viral-Bacterial Interactions in Childhood Respiratory Tract Infections: Nature

RSウイルス感染は肺炎球菌共感染を起こしやすい   08/02/25

RSウイルス(RSV)の流行と肺炎球菌(SP)の流行は同時期に起こることが知られています。肺炎球菌ワクチン接種の普及により小児のRSV入院が減少しました。

呼吸器系における細菌、真菌、ウイルスの正常なマイクロバイオーム構成は、ヒトの健康に有益であると考えられています。消化管マイクロバイオームが恒常性と全体的な健康の維持に重要な役割を担っているのと同様に、呼吸器マイクロバイオームの構成は宿主の免疫応答を調節し、それによって細菌やウイルスによる呼吸器感染症への感受性に影響を与えます。標準組成における「定着」平衡の破綻は、そこに眠っている潜在的な病原体の蔓延につながり、肺炎や敗血症に進行する可能性があります。

正常な呼吸器マイクロバイオームを構成する肺炎球菌は、小児において無症状に保菌されていますが、時にその定着肺炎球菌は病原性を示す可能性があり、RSウイルス感染症がその誘因となることを示唆するエビデンスがあります。RSV感染は、(1)接着分子および細菌毒性遺伝子の調節により細菌の上皮細胞への結合を強化し、(2)宿主の免疫応答を阻害することで、ヒト気道上皮細胞への肺炎球菌の付着を促進する。逆に肺炎球菌8,15A,19Fは、RSV複製を促進することが実証されています。

RSウイルス感染症のSP優位の鼻咽頭微生物叢プロファイルを持つ小児は重篤化しやすく、Toll様受容体関連遺伝子、好中球およびマクロファージの活性化およびシグナル伝達に関連する遺伝子の過剰発現が顕著であることが示されている。

RSウイルス感染症の小児の下気道では、肺炎球菌が増加し、健康な呼吸器微生物叢を成すナイセリア、プレボテラ、フソバクテリウムが減少していました。RSVは宿主免疫応答を妨害し、ヒト気道上皮細胞へのSPの付着を強化し、同時に常在細菌の増殖を抑制し、下気道マイクロバイオームの不均衡に至ることが示されています。上気道に関する研究では、RSウイルス感染症は年齢とは無関係であり、鼻咽頭におけるインフルエンザ菌とSPの増殖と関連していることが示されているが、小児の下気道においては、肺炎のもう一つの主な原因であるインフルエンザ菌が増加することがありませんでした。

さらに、宿主免疫系、細菌、ウイルス間の多方向的な相互作用が存在します。SPとRSウイルスが同時感染した状態では、抗炎症性好中球の特定のサブセットが活性化し、これらの細胞がT細胞を抑制し、ウイルス感染を助長する可能性があります。さらに、繊毛気道上皮細胞へのSPとRSVの重複感染は、粘膜の炎症反応を増強し、繊毛拍動頻度を低下させることが示されており、肺炎の重症化に寄与している可能性があります。

このように、RSV は肺炎球菌の定着を促進し、ナイセリアなどの健康常在菌を減少させ、RSV-SP重複感染による肺炎を引き起こしやすくするという、RSVと肺炎球菌間の特異的な相互作用が観察されています。

Lower respiratory tract co-infection of Streptococcus pneumoniae and respiratory syncytial virus shapes microbial landscape and clinical outcomes in children: Frontiers

腸内マイクロバイオームと肺       07/31/25

当時、重症化の要因を探るため、COVID-19の急性期から回復期における腸内マイクロバイオームの探究が不可欠でした。急性期には腸内微生物叢の多様性が低下し、回復期には増加していました。そして、急性期にはEnterococcus faeciumの顕著な寄与が確認され、回復期には酪酸産生細菌(Roseburia、Lachnospiraceae)の増加が見られました。さらに、Prevotella属はlong COVIDになりにくくする保護的効果を持っていました。

腸内マイクロバイオームは、主にFirmicutesフィルミクテス、Bacteroidesバクテロイデス、Aspergillusアスペルギルス、Actinobacteria放線菌に加え、Clostridiumクロストリジウム、Verruciformヴェルシフォルム、Spirochetesスピロヘータなどから構成されています。

腸内細菌叢は、リガンド、代謝物、免疫細胞を産生することで肺細菌叢に影響を及ぼすことができる数千の微生物で構成されており、これらは血流を介して肺に到達し、肺免疫を調節します。これらの循環細胞と代謝物を介して、腸内細菌叢は肺免疫に直接影響を及ぼし、場合によっては肺細菌叢の構成にも影響を及ぼします。

腸内マイクロバイオームは、免疫経路と代謝経路の両方を通じて肺機能に影響を与える可能性があります。腸内マイクロバイオームは喘息などの異常な免疫反応において重要な役割を果たしています。乳児では、肺や腸内に病原菌が存在することが、アレルギー性喘息の発症と関連しています。生後2~12か月の新生児の腸内微生物叢は、リポ多糖類(LPS)を介して、肺免疫系を調節し、酸化ストレスを増加させ、腸管バリアを調節することによって肺の損傷を媒介し、アレルギー性喘息を引き起こす可能性がある。酪酸を生成する腸内細菌群集や、SCFAなどの腸内微生物の代謝物の一部は喘息を予防します。腸管内の分節糸状細菌は、肺におけるTh17細胞応答を刺激し、肺炎球菌による感染と致死から肺を防御します。

このように、腸のマイクロバイオームは遠隔地である肺の免疫に影響しており、このような腸と肺の相互作用を「腸肺axis」と呼んでいます。

腸肺axisは双方向性であり、逆に肺は腸管の恒常性維持に影響を与えている可能性があります。鼻腔内に注入された物質はすぐに消化管内に出現し、
気管内の呼吸器系微生物叢の破壊は、一部の呼吸器系細菌を血流に移行させ、24時間以内に腸内微生物叢に影響を与え、腸内総細菌負荷を著しく増加させます。インフルエンザウイルス感染によって呼吸器系で生成されるインターフェロンは抗菌作用を示し、腸管の炎症反応を増幅さ、腸内細菌叢の異常を引き起こします。

喘息や COPD などの慢性肺疾患は、炎症性腸疾患 (IBD) や過敏性腸症候群 (IBS) などの慢性胃腸管障害を合併することがよくあります。IBD および IBS の患者も、肺疾患を発症する一定の可能性があります。喘息患者では腸粘膜の機能と構造が変化しており、COPD 患者では腸管透過性が通常増加しており、腸肺の密接な関係を表しています。

Gut Microbiome Composition and Dynamics in Hospitalized COVID-19 Patients and Patients with Post-Acute COVID-19 Syndrome
Impact of SARS-CoV-2 infection on respiratory and gut microbiome stability: a metagenomic investigation in long-term-hospitalized COVID-19 patients
Lung microbiome: new insights into the pathogenesis of respiratory diseases:Nature

RSウイルス感染のマイクロバイオーム     07/30/25

細気管支炎は、RSウイルス(RSV)感染が主な原因で、生後6ヶ月未満の乳児の入院原因疾患になります。鼻水、咳、喘鳴、息切れ、呼吸困難を起こします。2014年のcochrane reviewによると、アジスロマイシンまたはクラリスロマイシンの有効性は否定的な結論でしたが、将来的には、抗生剤が有益な病態がありうる可能性があるとも結論づけていました。それを受けて、2017年に発表されたAmerican Family Physicianのガイドラインでは、細菌感染が疑われたり確認される場合以外は、抗生剤投与は推奨されないとされました。

一方、そもそも特に小児の胸部レントゲン検査による肺炎の有無の判定はかなり主観的なものであることは避けられず、2018年のボストン小児病院は、胸部レントゲン検査で異常なしと判定されたうち9%が肺炎だったと報告しています。5歳児前後のマイコプラズマ肺炎の診断においてさえ、胸部レントゲンの誤診率が13%以上もあることが報告されています。ましてや、乳児のRSVによる細気管支炎において、胸部レントゲン検査の有無を問わず、肺炎がないと断定するのは極めて難しい。

乳児のRSV感染時のサイトカイン及び細胞内シグナル伝達の研究結果を考慮すると、乳児のRSV細気管支炎時はかなりのサイトカインストーム、強い炎症促進状態であることは確かです。2020年以降に起きたコロナ研究の副産物として、下気道・肺のマイクロバイオーム及び腸管マイクロバイオームの研究が進むにつれ、コロナウイルス感染時にこうしたマイクロバイオームによる炎症促進作用の寄与が相当大きいことがわかってきています。RSVがコロナウイルスと同程度の炎症促進状態を引き起こしうるウイルスであることから類推すれば、RSV感染も肺のマイクロバイオームの負荷増大による炎症促進作用が病態形成に大きく寄与しているとしても不思議ではない。RSVの肺内マイクロバイオーム研究が必要な理由です。

古いガイドラインに最新知見が反映されるのにはかなりの長年月が必要であることも確かです。

Antibiotics for bronchiolitis in children under two years of age
Respiratory Syncytial Virus Bronchiolitis in Children
The radiological diagnosis of pneumonia in children
Negative chest radiograph reliable rule-out of pediatric pneumonia
Clinical value and radiographic features of low dose CT scans compared to X rays in diagnosing mycoplasma pneumonia in children

気管支拡張症のマイクロバイオーム     07/29/25

気管支拡張症は、肺の気道の一部が永久的に拡張し、過剰な粘液の蓄積を引き起こす病気です。そのため、感染にさらされやすく、気管支拡張症では、発熱、痰、息苦しさによる急性感染性肺機能障害を発症することがしばしばです。

数多くの気管支拡張症で、FirmicutesとProteobacteriaが重症の気管支拡張症と関連していました。病状悪化に関連して最も多いのはインフルエンザ菌で、最も死亡率を高める病原体は、Pseudomonas aeruginosaとStreptococcus pneumoniaeでした。気管支拡張症が急性増悪しても、 微生物叢の構成はほとんど変化ないのですが、微生物叢多様性が減少してしまうことによって、重症化し死亡率も高まることになります。これは、微生物叢の多様性減少が治療に使われるマクロライドに感受性のある微生物叢の量の相対的減少につながるからだとも考えられますが、微生物叢全体の多様性低下によって、致死性の高いPseudomonasが相対的に増える結果であるとも考えられます。Pseudomonas aeruginosa、 Aspergillus fumigatus、非結核性マイコバクテリウム(NTM)による慢性感染、またはこれらの組み合わせは、肺損傷を加速的に進行させ死亡率を高めます。

真菌やウイルスも気管支拡張症の過程に関与しています。アスペルギルス(Aspergillus fumigatus、Aspergillus terreus)という真菌の量は病状の悪化と関連しており、気道炎症の重要な原因である可能性が示唆されています。小児の気管支拡張症では、呼吸器ウイルス、特にライノウイルスが被験者の48%で検出され、気管支拡張症急性期にはウイルス陽性サンプルの数が有意に多かったことが示されています。

気管支拡張症では、気道の粘液線毛クリアランスの低下によって、Neisseria subflava が気道に定着し、繊毛上皮機能を抑制し破壊する因子を放出します。それに対して宿主側は好中球性気道炎症を引き起こし、肺損傷を進行させます。その結果、さらにクリアランス機構が弱められ、悪循環に陥ります。そして、P. aeruginosa の優勢および微生物叢多様性の低下は好中球性炎症レベルを高めていました。一方、Rothia属の多様性は気道炎症の抑制と関連していました。

Lung microbiome: new insights into the pathogenesis of respiratory diseases: NATURE

COVID-19肺のマイクロバイオーム      07/28/25

COVIDの肺で微生物負荷が増加すると、呼吸器管理から離脱して回復する確率が低く、死亡率が高いことがわかっています。
肺微生物叢の増加及び構成の変化は宿主の免疫応答に影響を与え、肺胞の炎症を増加させる可能性があります。肺の細菌および真菌の量が、炎症の活性化に関与するサイトカインや肺胞炎症マーカー (TNF-α、IL-6、IL-1β) と関連していました。また、COVIDの重症化、ARDSの発症に関連していました。肺の微生物群の量と不均衡が、回復率や死亡率と関連していたのですが、特定の個々の細菌の種類とは関連していませんでした。

このように、COVIDはウイルスによって引き起こされるのですが、肺のマイクロバイオームが炎症反応を促進し、サイトカインを調節することで重症肺炎の発症に寄与しています。ある種の抗生剤の有効性を支持した、パンデミック初期の報告は、肺マイクロバイオームに関する知見と合致していたのです。

Lung microbiome: new insights into the pathogenesis of respiratory diseases: NATURE
Doxycycline for the prevention of progression of COVID-19 to severe disease requiring intensive care unit (ICU) admission: A randomized, controlled, open-label, parallel group trial (DOXPREVENT.ICU)
Doxycycline treatment of high-risk COVID-19-positive patients with comorbid pulmonary disease

海外で評価されている学術研究

- Detailed Analysis of Immune Tolerance Mechanisms to SARS-CoV-2 in Children Is Needed (2021)『小児コロナ免疫についての論文』

- Early activation does not translate into effector differentiation of peripheral CD8T cells during the acute phase of Kawasaki disease (2010)『川崎病における免疫反応についての論文』

- Tenderness over the hyoid bone can indicate epiglottitis in adults (2006)『急性喉頭蓋炎を見つけるコツを発見した論文』

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