閉経後の女性は慢性的な咳に悩まされることが多い。香水、漂白剤、冷気などの環境刺激物を吸い込むと、皮膚にくすぐったいような刺激感を感じたり、のどが痛くなったり、咳が出たりするような、顕著な過敏性を訴えることが多い。咳を媒介する神経経路の感受性の亢進を示す長引く咳嗽を訴える患者の3分の2が女性であり、50~60歳代の有病率が最も高いという疫学的特徴がある。
喘息には明らかな性差がある。13歳未満の小児では、男児に喘息が多い一方(有病率65%)、成人では、女性の方が男性より明らかに多い(有病率65%)。生涯を通じて、女性は男性よりも喘息を発症しやすく、重症化する可能性が高い。そして、女性の喘息においては、アトピー型が少なく、ステロイドによる治療効果が低い人が多く、ステロイド不応性喘息の肥満患者では女性が圧倒的に多い。
喘息を持つ女性の20~40%が、月経前の黄体期または月経前後に症状が出て、呼吸機能が低下することが多い。閉経後の喘息女性(少なくとも6ヵ月間無月経)は、閉経前よりも肺機能が低下し、喘息症状が悪化していました。ホルモン避妊薬は喘息の発症率を低下させ、一方男性ホルモン薬は、喘息の発症率を低下させ、喘息の症状を軽減する可能性がある。
閉経後のホルモン変化は、肺機能や気道粘膜に影響を及ぼし、咳反射の過敏性を引き起こし、咳嗽を起こしやすくしている可能性があります。
エストロゲンが不足することによる皮膚、結合組織、粘膜の変化は、呼吸器粘膜などの細胞にも起きている可能性がある。エストロゲンの欠乏は、膣上皮の萎縮を引き起こすのと同様に、気道粘液や繊毛の減少や変化、呼吸器組織の感受性の変化を引き起こし、肺機能の低下や慢性咳嗽を引き起こす可能性がある。
喘息発症に関わる免疫経路におけるいくつかの性による違いがある。ステロイド治療が有効であるT2炎症型は、女性では男性よりも少ない。とりわけ中年女性、更年期以降の女性の場合は、非T2炎症型が比較的多く、結果的に好中球浸潤、粘液産生を多く生じるため、喀痰の多い湿性喘息が多く、ステロイド吸入の効果が男性に比べると劣る。一方、長時間作用性ムスカリン拮抗薬であるチオトロピウムの効果は、男女間で違いはなかった。抗ロイコトリエン薬は男性に比べて女性での方が有効性が高い。
Sex and gender in asthma;Eur Respir Rev.
Chronic cough in postmenopausal women and its associations to climacteric symptoms;BMC Womens Health