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若年層の時期に喘息が消えるのは男性ホルモンのせい         02/19/25

小児期に発症した喘息が完全に消えて無くなることはなく、一般に10歳代から20歳代にかけて症状が鎮静化して一見完治したかのように見えますが、その後どこかで、長引く咳・長引く喉のイガイガ感・長引く喘鳴や喀痰という形で再燃するのが普通です。したがって、親子で同じ時期に長引く咳が生じ、家庭内で風邪が蔓延しているように見えることもしばしばです。

思春期から若年層の時期に喘息が消えるのは、アンドロゲン(男性ホルモン)の分泌が男女ともに最も多くなる時期だからです。アンドロゲンの分泌は20歳前後がピークで30歳以降は徐々に低下していきます。アンドロゲンは、ニキビ・体毛の成長・筋肉の発達を引き起こすばかりでなく、気道アンドロゲン受容体(AR)に作用して、喘息の炎症を抑制することがわかっています。実際に、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)という男性ホルモンの気道吸入は喘息を抑えるのに有効でした。

喘息は思春期以降、男性よりも(アンドロゲンの少ない)女性に多くみられることになります。そもそも喘息患者の気道AR発現は男女問わず健常者よりも低いことが報告されています。一方、喘息と気道AR発現との関連性は、閉経後女性においては認められず、またアンドロゲンが少なくなっている閉経女性に対するステロイド投与はアンドロゲン分泌をさらに抑制することになり、これらが相まって閉経後女性の喘息に対して吸入ステロイドの有効性が下がる原因になっているのではないかと考えられています。思春期前の小児においても、喘息と気道AR発現との関連性はなく、女児よりも男児に喘息が多く認めらますが、これは気道の発育障害の違いによるものと説明されています。

Androgens Alleviate Allergic Airway Inflammation by Suppressing Cytokine Production in Th2 Cells; The Journal of Immunology
Association Between Asthma and Reduced Androgen Receptor Expression in Airways; Journal of the Endocrine Societye