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遷延性細菌性気管支炎 Protracted Bacterial Bronchitis (PBB)    10/14/24

小児において、慢性咳嗽とは、4週間以上続く日常的な咳嗽と定義される。
遷延性細菌性気管支炎(PBB)は、他の特異的な原因による症状や徴候のない、主に0~6歳まで(中央値1.8〜4.8歳)の就学前の小児における慢性湿性咳嗽の一般的な原因であり、通常、適切な抗生物質の2週間の経口投与により治癒する。気管支拡張症の初期段階、またはPBBから気管支拡張症に至るスペクトラムの一部と考えられている病態である。

診断は主に臨床的なものであり、通常、特別な検査は必要ない。
臨床的診断基準
1) 慢性(持続期間 4 週以上)の湿性または喀痰を多く伴う咳嗽が持続する。または、そういう既往歴
2) 湿性または喀痰の多い咳嗽の他の原因を示唆する症状または徴候がない。
3) 適切な経口抗生物質(アモキシシリン・クラブラン酸塩)を2週間服用後、咳嗽が消失した。

PBBは、普通の風邪ウイルス感染後遷延性咳嗽や気管支喘息と間違われやすいし、喘息と併存していることもある。
診断のきっかけの一つは、聴診による“ラトゥリング・チェスト(rattling chest)” と呼ばれる、喘息で聴かれる喘鳴音ではない”crackles”である。また、単純な喘息の場合はあまり痰が多くなく、かつ/同時に夜間増悪する傾向が顕著である一方、PBBでは湿性で痰が多い咳である点が、喘息との鑑別診断に役立つ。そして抗生剤に対する良好な反応という治療的鑑別診断が重要である。
喘息が一旦疑われたのにも関わらず、喘息の治療があまり効かなかった場合で、湿性咳嗽であった場合は、そもそもPBBを考慮すべきで、抗生剤投与を試してみるべきである。

PBB患者の気管支肺胞洗浄液(BAL)から検出される最も一般的な細菌は、インフルエンザ菌(47–81%)、肺炎球菌 (24–39%)、モラクセラ・カタラリス(19-43%) であるが、複数の細菌が関与している(30-50%)場合も多い。PBBの小児のBALからさまざまな種類のウイルスが検出されているが、PBBの病因にウイルスが関与しているという確かな証拠はない。気道軟化症はPBB小児によくみられるが、逆に免疫不全との相関はみられない。

アモキシシリン・クラブラン酸が最も一般的に使用される抗生物質であり、第一選択薬として、咳嗽の消失に長期療法(最低2週間以上4〜6週間)が必要となることがある。60%に効果があり、40%は複数回同じエピソードを繰り返すとされる(年間3回以上は、再発性PBBとされる)。

長期の抗生剤治療にもかかわらず湿性咳嗽が改善しない場合は、基礎疾患を考慮する必要がある。
さらに、PBBと気管支拡張症との関連についてはいくつかの仮説がある。最近のエビデンスによると、PBBの再発(3回/年以上)と下気道におけるインフルエンザ菌感染の存在は、気管支拡張症発症の重要なリスク因子であるようである。

ERS guidelines on the diagnosis and treatment of chronic cough in adults and children
Frontiers in Pediatrics
American Thoracic Society