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熱の出ない肺炎の原因はマイコプラズマだけではありません 09/22/24

この1年間でとても印象的なことのひとつは、大人でも小児でも熱の出ない肺炎がとても多いことです。
最近は、マイコプラズマがスマホでも学校のクラスでも流行っているという噂話だけで、マイコプラズマ肺炎に違いないと来院する方が増えています。
確かにマイコプラズマでは元々発熱を伴わないケースが多いのも事実ですが、以下に挙げたそれ以外の原因菌や原因ウイルスが発熱を伴わずに肺炎を引き起こしている例が、高齢者や乳幼児以外の世代でも非常に多いことに驚かされています。

実際には、肺炎を起こす原因は多岐に渡ります。外来で見られる肺炎を引き起こす原因としては、
代表的な細菌:肺炎球菌(最も一般的な原因菌、だから肺炎球菌ワクチンの接種が勧められている)、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラリス、黄色ブドウ球菌、A群連鎖球菌、好気性グラム陰性菌(例えば、クレブシエラ属や大腸菌などの腸内細菌科)、微好気性細菌および嫌気性菌(誤嚥に伴うもの)
非定型菌(「非定型 」とは、これらの菌がβ-ラクタム系抗生剤に対して本質的に耐性であり、グラム染色で可視化できなかったり、従来の技術で培養できなかったりすることを指す):レジオネラ属、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、オウム病クラミジア、コクシエラ・ブルネティ
呼吸器ウイルス:A型・B型インフルエンザウイルス、SARS-CoV-2、その他のコロナウイルス(CoV-229E、CoV-NL63、CoV-OC43、CoV-HKU1など)、ライノウイルス(呼吸器エンテロウイルス)、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトボカウイルス
があげられます。
肺炎のうち半分以上は、分子生物学的検査を行なっても最終的に原因菌が特定できないのが実情です。大人の肺炎の1/3以上はウイルスが原因の肺炎です。また、実は肺の中には腸内細菌叢と同じように常在細菌叢があることがわかってきたため、痰の検査で検出されたどの細菌が本当に悪さをしているのか疑わしいのが実情です。ウイルス性肺炎と細菌性肺炎が果たしてどの程度合併しているかも確実に知る術はありません。

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