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気管支喘息は遺伝です〜リモデリングの話

以前から、インフルエンザや風邪にかかって気道を痛めることが、喘息発症の引き金になることが実験的に示されていました。パンデミックによって、市中から風邪と喘息が同時に消え去りました。そして今、あらゆる風邪ウイルスが戻ってくると同時に、何年かぶりに喘息になる人が激増しています。呼吸器ウイルス感染症が、喘息発症のきっかけになることが世界規模で実証されたのです。風邪ウイルスは体内から2週間でいなくなります。ところが、そのウイルスによって引き起こされた気道炎症が治るために必要な期間は、人によって異なります。皮膚がとてもきれいな人(かなり稀)は、実際に怪我をしても口内炎になっても驚くほどあっという間に治ります。しかも跡を残さずに治りやすい。一方、そうでない人は傷が治りにくく、治ってもでこぼこが残ってしまう。特に歳をとると一層目立つようになります。この傷が治る過程をリモデリングと言います。気道でもウイルスが炎症を起こし気道を荒らした後に、リモデリングが起こります。リモデリングの出来具合が悪くて、傷の上がりが悪かったり、その後もでこぼこが残っていると、表面は吸い込まれてくる冷たい空気の刺激に過敏だったり、ざらついた表面を空気がスムーズに流れることができません。そのために、いつまでも、咳が残ったり、喘鳴が起こります。表面皮膚や気道の壁のリモデリングの良し悪しは100%遺伝で決まります。喘息は現実的には100%遺伝です。だから、肌を見れば喘息だとわかります。親の肌を見れば、子が喘息かどうかわかります。時に兄弟3人にとどまらず、3世代揃って咳で受診なさいます。残念ながら、現代人の多くに、喘息の遺伝子変異が紛れ込んでしまっています。(昔は、喘息遺伝子は継代される確率が今よりも低かったと考えられる。) そうした遺伝子変異を持っている人の気道には、ウイルスが風邪とともに去りぬの後に、長く続く咳や喘鳴が引き起こされやすい。特に樹々の葉っぱに水分が行き届かなくなって紅葉から落葉に至る、自然界に存在する細胞が脱落しやすい時期、逆に花々が咲いて細胞の新陳代謝の激しい時期のようなリモデリング状態に悪影響を及ぼす環境因子が重なると同時に、朝晩の気温差や気圧差が生じると、荒れた気道表面に刺激の強い空気が流れこむことによって、喘息が引き起こされます。リモデリングが悪い細胞なので、吸入ステロイドによる助けがない限りは、きれいになるまで時間がかかります。咳の発生状況や経過によって、感染後遷延性咳嗽、咳喘息などという病名を伝えますが、根本的には全て喘息関連遺伝子変異の仕業です。残念ながら、小児喘息は完治することはありません。100%、成人後のいずれかの時期に長引く咳や喘息という形で再燃してきます。そして、リモデリングは老化によって悪化するため、ゆっくりとですが、成人喘息として固定化していきます。アトピー性皮膚も少量のステロイドなどのお薬できれいな状態を維持すれば、比較的つるつるの肌を維持し続けることができるのと同じように、喘息でも気道表面をできるだけつるつるに維持することは大切なことだと考えられます。