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RSウイルス感染のマイクロバイオーム     07/30/25

細気管支炎は、RSウイルス(RSV)感染が主な原因で、生後6ヶ月未満の乳児の入院原因疾患になります。鼻水、咳、喘鳴、息切れ、呼吸困難を起こします。2014年のcochrane reviewによると、アジスロマイシンまたはクラリスロマイシンの有効性は否定的な結論でしたが、将来的には、抗生剤が有益な病態がありうる可能性があるとも結論づけていました。それを受けて、2017年に発表されたAmerican Family Physicianのガイドラインでは、細菌感染が疑われたり確認される場合以外は、抗生剤投与は推奨されないとされました。

一方、そもそも特に小児の胸部レントゲン検査による肺炎の有無の判定はかなり主観的なものであることは避けられず、2018年のボストン小児病院は、胸部レントゲン検査で異常なしと判定されたうち9%が肺炎だったと報告しています。5歳児前後のマイコプラズマ肺炎の診断においてさえ、胸部レントゲンの誤診率が13%以上もあることが報告されています。ましてや、乳児のRSVによる細気管支炎において、胸部レントゲン検査の有無を問わず、肺炎がないと断定するのは極めて難しい。

乳児のRSV感染時のサイトカイン及び細胞内シグナル伝達の研究結果を考慮すると、乳児のRSV細気管支炎時はかなりのサイトカインストーム、強い炎症促進状態であることは確かです。2020年以降に起きたコロナ研究の副産物として、下気道・肺のマイクロバイオーム及び腸管マイクロバイオームの研究が進むにつれ、コロナウイルス感染時にこうしたマイクロバイオームによる炎症促進作用の寄与が相当大きいことがわかってきています。RSVがコロナウイルスと同程度の炎症促進状態を引き起こしうるウイルスであることから類推すれば、RSV感染も肺のマイクロバイオームの負荷増大による炎症促進作用が病態形成に大きく寄与しているとしても不思議ではない。RSVの肺内マイクロバイオーム研究が必要な理由です。

古いガイドラインに最新知見が反映されるのにはかなりの長年月が必要であることも確かです。

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