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気管支拡張症のマイクロバイオーム     07/29/25

気管支拡張症は、肺の気道の一部が永久的に拡張し、過剰な粘液の蓄積を引き起こす病気です。そのため、感染にさらされやすく、気管支拡張症では、発熱、痰、息苦しさによる急性感染性肺機能障害を発症することがしばしばです。

数多くの気管支拡張症で、FirmicutesとProteobacteriaが重症の気管支拡張症と関連していました。病状悪化に関連して最も多いのはインフルエンザ菌で、最も死亡率を高める病原体は、Pseudomonas aeruginosaとStreptococcus pneumoniaeでした。気管支拡張症が急性増悪しても、 微生物叢の構成はほとんど変化ないのですが、微生物叢多様性が減少してしまうことによって、重症化し死亡率も高まることになります。これは、微生物叢の多様性減少が治療に使われるマクロライドに感受性のある微生物叢の量の相対的減少につながるからだとも考えられますが、微生物叢全体の多様性低下によって、致死性の高いPseudomonasが相対的に増える結果であるとも考えられます。Pseudomonas aeruginosa、 Aspergillus fumigatus、非結核性マイコバクテリウム(NTM)による慢性感染、またはこれらの組み合わせは、肺損傷を加速的に進行させ死亡率を高めます。

真菌やウイルスも気管支拡張症の過程に関与しています。アスペルギルス(Aspergillus fumigatus、Aspergillus terreus)という真菌の量は病状の悪化と関連しており、気道炎症の重要な原因である可能性が示唆されています。小児の気管支拡張症では、呼吸器ウイルス、特にライノウイルスが被験者の48%で検出され、気管支拡張症急性期にはウイルス陽性サンプルの数が有意に多かったことが示されています。

気管支拡張症では、気道の粘液線毛クリアランスの低下によって、Neisseria subflava が気道に定着し、繊毛上皮機能を抑制し破壊する因子を放出します。それに対して宿主側は好中球性気道炎症を引き起こし、肺損傷を進行させます。その結果、さらにクリアランス機構が弱められ、悪循環に陥ります。そして、P. aeruginosa の優勢および微生物叢多様性の低下は好中球性炎症レベルを高めていました。一方、Rothia属の多様性は気道炎症の抑制と関連していました。

Lung microbiome: new insights into the pathogenesis of respiratory diseases: NATURE