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肺炎のマイクロバイオーム      07/27/25

肺炎は読んで字の如く、肺の炎症、火事のことですが、その火元は大抵、細菌・ウイルス・真菌または他の微生物であることになっている。例えば、マイコプラズマやクラミジアは肺の常在菌ではないので、それらによる肺炎は外部病原体の肺への侵入によって引き起こされているのは明らかです。一方、市中肺炎の原因菌でもっともありふれた肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ・カタラーリス、(頻度は低いが)黄色ブドウ球菌、緑膿菌は、流行性感染症でもないのに、一体どこからやって来るのだろうかという根本的な問いに対する答えは推測の域を出ないままでした。

肺のマイクロバイオームを構成しているPrevotella, Streptococcus, Clostridium, Roseburia, Veillonellaなどの下気道・肺の微生物叢の量の増加、つまり細菌負荷量の増大と多様性の低下及び不均衡が、サブクリニカルな炎症開始のドライバーになっています。 中等度から重度のCOPDでは、早期COPDに比べてマイクロバイオームの多様性が低下していました。COPDでは、新しい菌株に感染したり、細菌負荷が変化するとその後、炎症の増加と肺機能の急速な低下が起こります。

何らかの機序で免疫力が低下した結果、肺の微生物叢の量が増大すると同時に、それを構成する微生物群間の不均衡が起こります。優勢になる細菌群は肺炎の基盤になった状況によって異なっており、立場が逆転することもあります。Streptococcus、Prevotella が優勢になる肺炎パターンがある一方で、これらが劣勢になる肺炎パターンもあります。Pseudomonas、Staphylococcus、Streptococcus が優勢な肺炎パターンがある一方で、Prevotella、Veillonella、Corynebacterium、Roseburia が優勢な肺炎パターンもあります。

風邪のウイルス感染でも大気中の何らかの汚染物質でも、いったん下気道や肺を損傷させると肺内の微生物叢の増加と、特定のコロニーの過剰増殖へのシフトが引き起こされ、同時に宿主の免疫機構の一部が障害を受け、さらに炎症を増幅させることになります。こうして突然のように発生した細菌性肺炎は、潜在的な正のフィードバックループの特徴を有し、一度始まると、増殖促進シグナルが徐々に増幅され、マイクロバイオームと宿主側との恒常性の障害と炎症の増加という悪循環を形成します。こうして、選択された細菌群の増殖と病原性が促進され、肺胞炎症が長期にわたって持続する可能性があります。サイトカインと代謝物を調節することで、肺のマイクロバイオームは肺炎の進行を引き起こす炎症を促進します。この調節メカニズムは複雑で双方向性であり、肺のマイクロバイオームの構成自体にも影響を及ぼします。

特定の呼吸器生態系において肺の細菌負荷量は本質的に固定されており、システミックな抗生物質投与は肺の細菌負荷量全体を大幅に減少させることはできないものの、マイクロバイオームの構成を変化させる可能性があると考えられています。狭く特定の微生物群に標的を絞った治療法の可能性は理想的ではあるが、それは少なくとも現時点においては決して現実的な方法ではありません。抗生物質投与は、微生物叢全体を標的として全体の細菌負荷量を一旦軽減し、偏ってしまった多様性と構成をデフォルトのバランスに戻す再調整アプローチとして効果があるのだと考えられています。

Lung and gut microbiota profiling in intensive care unit patients: a prospective pilot study
Therapeutic Targeting of the Respiratory Microbiome