熱の出る病気の経過中、一旦下がったのに再び発熱、解熱することがあります。二峰性発熱といいます。
小児の二峰性発熱は、必ずしも悪い状態を示唆するわけではありません。軽いウイルス感染、つまり普通の風邪でも、治る直前に再発熱したり、それと同時に体中に発疹が出てきて治癒に向かうことはとても多く見られます。突発性発疹では、解熱(小さなdipのことも)後発疹が出る時に軽く再発熱することがありますが、そのまま自然に治っていきます。二峰性発熱はインフルエンザでもよくあります。こうした現象が起こるのは、体の中に入ってきたウイルスに対する免疫細胞の反応の種類によって応答フェーズのズレがあるからです。ウイルスが入ってきた直後に反応するものと数日経ってから反応するものがあるからです。遅れて起きる免疫システムの反応の方がどちらかというと過剰反応しやすいのですが、特に小児の軽いウイルス感染つまり風邪の場合は、この二段階目の免疫応答はさほど過剰な炎症は引き起こしません。 小児では、熱が出た割に重症感がないことが多い。二峰性=「必ずしも悪いサインではない」ことが多い。
一方、二度目の発熱でちょっと具合悪そうだなという時には、ウイルスそのものは駆除されているのに、その後免疫システムが過剰反応を起こし、サイトカインストーム(炎症の嵐)が起きていることを考えなければなりません。デング熱で一旦熱が下がった後に重症化する場合、麻疹で咳や鼻水のフェーズ後発疹が出てくる時期がそれに当たります。川崎病では、この二次免疫過剰応答だけを何日間も見ているだけに該当することもあります。
さらに、ウイルスは駆除されつつあるものの、細菌による二次感染が起きていることもあります。よく見られるのが、風邪から始まって中耳炎や副鼻腔炎になる場合です。インフルエンザの二峰性発熱の場合でも、咳・痰・呼吸状態の悪化を伴う場合は、二次感染による肺炎球菌などによる細菌性肺炎を想起しなければなりません。
髄膜炎や敗血症でも、免疫応答フェーズのズレで波状の発熱になることがあります。この場合は、最初の発熱フェーズから重症感が強いこともあれば、さほど気づかれにくいこともあり、初期診断を難しくすることもあります。
日常外来環境下では、頻度としては、小児の二峰性発熱は「自然な病態変化」が多いが、成人の二峰性発熱は「重症化や二次感染の警告」であることが多いと言えます。