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夏風邪ウイルス エコー18        06/30/25

典型的な夏風邪は一般的にエンテロウイルス属というウイルスグループの中の一部(エンテロウイルスA,B,C,D種とライノウイルスA,B,C種という種類)によって引き起こされます。それぞれの「種」類ごとの代表的ウイルス型は以下のようです。エンテロウイルスA種には、エンテロウイルスA71(手足口病・脳幹脳炎)、コクサッキーA16, A6が、エンテロウイルスB種には、エコーウイルス群(6, 9, 18など)、コクサッキーB1〜B6、コクサッキーA9が、エンテロウイルスC種には、ポリオウイルス1〜3、コクサッキーA13, A20, A21が、エンテロウイルスD種には、エンテロウイルスD68(呼吸器感染、喘息増悪)、エンテロウイルスD70(急性出血性結膜炎)が、ライノウイルスA/B/C種には鼻と気管支にくる風邪ウイルスの大多数がそれぞれ含まれます。
これらのうち、エンテロウイルスB種の中のエコーウイルス18が最近市中に出てきています。

エコーウイルス18は世界中に分布し、特に小児の無菌性髄膜炎の流行株として重要です。アジア、欧州、米国など各国で無菌性髄膜炎のアウトブレイクを引き起こしてきました。中国(2015–2018年)で、欧州(スイス、ドイツなど)では周期的な小規模アウトブレイクを起こしています。温帯地域では夏季に流行しやすく、集団内免疫レベルによって周期的な流行になるとされています。

多くは無症候性感染ですが、夏風邪症状としては、非特異的発熱性疾患(軽い〜高い発熱、咽頭痛、筋肉痛、倦怠感、インフルエンザと似た感じ)になることが多い。稀であるとはいえ、無視できない病状として、無菌性髄膜炎(発熱、頭痛、項部硬直、悪心、嘔吐)や、新生児感染症(まれだが重症化リスクあり。敗血症様症状、中枢神経感染)を引き起こすことがある。エコーウイルスは時に発熱なしで発疹だけを起こすこともあり、単なる湿疹や吹き出物・ニキビに似た発疹に見えるため、ウイルスによる発疹として認識されにくいこともあります。胃腸炎様症状もあります。

簡単にできる検査キットは存在しませんし、一般にその必要性もありません。なぜなら、そうとわかったところで特別な抗ウイルス薬はないからです。夏風邪症状になったところで、特別な治療や薬があるわけではないので、ぐっすりまたはゆっくり休むことが最も効果的な治療方法になります。もちろん、髄膜炎では入院経過観察が必要です。

エンテロウイルス属全般に言えることですが、ここに属するウイルス達はカプシドと呼ばれる鎧のような殻で覆われているため、アルコール消毒ではびくとも壊れません。石鹸と流水でしっかり洗浄しないと、かなり環境中で安定しています。便中にもたくさん放出されます。次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤希釈液など)は有効なので、トイレはそれを使ってしっかり掃除してください。

Enteroviruses: epidemic potential, challenges and opportunities with vaccines:Journal of Biomedical Science