非2型喘息における好中球性炎症を捉えるバイオマーカーとして、IL-6、メタロプロテアーゼ9(MMP9)、喀痰中の特定のマイクロRNAが候補に上がっているが、実臨床で使用可能で決定的なバイオマーカーは今のところ存在しない。そもそも、血中/喀痰中好中球が臨床的に重要な役割を果たしているのか、それとも局所的な炎症反応の副産物に過ぎないのかは依然として不明であり、好中球性炎症の所見は、同時進行する高用量コルチコステロイド療法、環境汚染やタバコの煙への曝露、あるいは併発する細菌感染など、様々な無関係な原因によって二次的に生じている結果である可能性がある。にも関わらず、2型喘息と非2型喘息に分けるアプローチは、2型炎症の比較的単純なバイオマーカーの存在と、2型サイトカインを標的として治療法が利用可能である現況において、実臨床上極めて有用な方法になる。
① 成人発症非アトピー性喘息
成人発症の非2型喘息は好酸球増多などの2型炎症マーカーを認めず、好中球性(喀痰中の好中球数が40~60%超)または少顆粒球性(喀痰中の好酸球数と好中球数がともに正常)の炎症と、コルチコステロイド療法への反応の欠如を特徴とする。この条件だけでは、経過および呼吸機能低下の予後については様々である。
② 肥満関連喘息
肥満は喘息罹患率の重大な危険因子である。非アトピー性中年女性による肥満関連喘息では、肺機能が中等度に保たれているにもかかわらず、重度の症状を呈する。肥満喘息症候群では分子レベルでの非好酸球性炎症メカニズムが示唆されている。肥満はCD4細胞をTh1型へ分化させ、これがステロイド抵抗性喘息と関連している。Th17経路や自然免疫系リンパ球(ILC)を含む自然免疫応答も関与していることが示唆されている。また、より重症の喘息を有する一部の肥満患者において血漿中IL-6濃度が上昇していたのに対し、全ての肥満喘息患者において上昇していたわけではない。重症喘息を有する肥満関連喘息では、IL-17、IL-22、IL-6の好中球性炎症惹起性サイトカインが臨床的に重要である。
③ 喫煙関連喘息
喫煙関連喘息は非2型好中球性、ステロイド抵抗性の表現型と考えられている。好中球とマクロファージの活性化を引き起こす酸化ストレスによるメカニズムが推定されている。喫煙はアレルゲンに対する感作のリスクも高め、総IgEを増加させ、「喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)」を引き起こす。この用語は、かなりの喫煙歴があり、その結果として気流閉塞があり、喘息の重複した特徴(気管支拡張薬の可逆性、好酸球増多、アトピー)も持ち合わせている患者を区別する。主要基準には、40歳以上で10パック・イヤー以上の喫煙歴を持つ患者における持続的な気流制限、および40歳未満での喘息発症があり、副次基準には、アトピーの既往、有意な気管支拡張薬の可逆性、および末梢血好酸球増多が含まれる。
③ 超晩発性喘息
超晩発性喘息の診断における年齢のカットオフ値は、一部の研究では50歳以上、他の研究では65歳以上と定義されている。肺の老化は、弾性収縮力の低下や機械的な不利な状況による肺機能の低下を引き起こす。そうした正常な老化による影響に加えて、免疫老化が高齢喘息患者に重要な影響を及ぼしている。高齢喘息ではTh1およびTh17の炎症に続発して痰の好中球増加症が増加している。
Understanding Asthma Phenotypes, Endotypes, and Mechanisms of Disease