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好中球性喘息        08/21/25

痰中に60%を超える好中球を有する成人喘息患者(好中球性喘息)は、高齢、男性、発症が遅い、肺疾患がより重篤な傾向があり、アトピーとの関連が少なく、呼気一酸化窒素(FeNO)レベルが低く、30ppb未満であることがよくある。(小児では、気道好中球増多はそれほど一般的ではなく、発生する場合は急性または亜急性気道感染であることが多い。)病原性を持つ可能性のある気道細菌を保有しており、一般的な喘息治療に抵抗性である。
好中球性喘息は成人全喘息症例の約20~30%(5人に1人)を占めている。喘息の増悪の大部分が非好酸球性であり、好中球増加によるものである(好中球68%、好酸球0.3%)。

喘息における肺の好中球動員は、気道汚染物質や潜在的病原細菌の存在などによって引き起こされる肺の炎症に対する「正常な」反応である。好中球は極めて重要な「第一線」の免疫応答を担い、炎症の原因に関わらず、肺に最初に動員されるエフェクター細胞の一つである。最も豊富な白血球でもあり、循環血中の白血球の70%を占めている。気道炎症部位では、好中球はインフルエンザ菌や肺炎球菌などの標的物質を貪食して退治する。

ところが、加齢によって好中球の微生物殺傷能力は低下していく。小児とは対照的に、高齢者の好中球は病原体除去の有効性が低下すると同時に、むしろ傍観者として宿主気道細胞を損傷する傾向がある。好中球性喘息の成人患者では、抗炎症機能不全と同時に、炎症誘発性メディエーターの放出増加によって、粘液過剰分泌および気道リモデリングが生じる。

小児に多い好酸球性喘息では確かに、肺炎球菌 S. pneumoniae、連鎖球菌 S. pyogenes、百日咳 Bordetella pertussis、レジオネラ Legionella pneumophila、マイコプラズマ Mycoplasma pneumoniae、クラミジア Chlamydia pneumoniaeなどの細菌性病原体に弱く、それらによる急性呼吸器感染症を罹患しやすい。しかし、急性感染症がない通常時には、好酸球性喘息患者の気道内細菌レベルは低く、ゲメラ属、連鎖球菌属、ナイセリア属など主に上気道微生物叢の一般的な構成菌であり、気道細菌多様性も保たれている。

一方、好中球性喘息では、気道内の好中球増加に伴って、宿主の免疫応答に抵抗できる少数の細菌である、ガンマプロテオバクテリア属細菌、特にインフルエンザ菌(H. influenzae)とモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、さらに連鎖球菌(S. pneumoniae)の気道内での大幅な増殖と、細菌多様性の顕著な減少が見られる。これは気管支拡張症、COPD、嚢胞性線維症など、気道好中球増多を特徴とする他の慢性呼吸器疾患のマイクロバイオーム環境と同じである。

好中球性喘息では、他の慢性呼吸器疾患と同じように、気道クリアランス障害と粘液過剰分泌の結果として好中球が気道分泌物中に蓄積すると同時に、インフルエンザ菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌といった呼吸器系日和見病原体が分泌物内で増殖し、細菌負荷の増加と細菌多様性の減少を引き起こす。気道内細菌増殖に伴う気道炎症の増加は、さらなる気道クリアランスの低下と微生物叢多様性の低下を悪化させ、慢性的な細菌定着と気道好中球増多の持続的なサイクルに入る。好中球エラスターゼは、気道粘液腺の過形成、粘液分泌、気道平滑筋細胞の増殖、気道過敏性、杯細胞化生、炎症細胞浸潤を引き起こし、慢性好中球浸潤によって持続的な気道損傷およびリモデリングが進行していく。このような慢性好中球増多および気道感染は、気管支拡張症と同じように 重症のコントロール不良喘息患者においてよく見られる。

好中球性喘息を含めた慢性呼吸器疾患全般において、加齢に伴い、機能不全に陥った好中球性炎症という環境が、気道マイクロバイオームの構成に対する選択圧となっている。対照的に、小児喘息では、好中球は有害事象との関連性が低く、小児においては好中球の病原性が低い可能性がある。好中球性喘息における気道細菌、炎症、そして好中球増加症の間の悪循環が確立するには加齢という相当な時間が必要である。

Neutrophils in asthma: the good, the bad and the bacteria:BMJ Journals Thorax