腸内や口腔咽頭部のマイクロバイオームの豊富な微生物群集と比べて、肺のマイクロバイオームには常在微生物が少ないが、群集の多様性は保たれています。肺のマイクロバイオームは、細菌の群集であるバクテリオーム、カビの群集であるマイコバイオーム、ウイルスの群集であるヴァイロームから成る集合体です。
細菌群集(バクテリオーム)
肺のバクテリオームでは、ストレプトコッカス、ヴェイロネラ、プレボテラが最も一般的な属であり、ヘモフィルス(インフルエンザ菌など)は肺に特有の常在微生物であり、他の部位のマイクロバイオームでは稀な細菌です。(肺のコア微生物叢には、Pseudomonas、Streptococcus、Proteus、Clostridium、Haemophilus、Veillonella、およびPorphyromonasが含まれます。)
皮膚や腸のような、ほぼ変わることがない自己維持型の微生物叢とは異なり、肺の微生物叢の構成は永続的なものではなく、体の免疫応答に応じて変化します。肺の微生物叢は口腔咽頭や上気道といった隣接する部位から微生物の継続的な移動を受けるため常に変化し続けており、新しい種がランダムに導入されたり除去されたりしています。そのため肺の微生物の組成は口腔咽頭と類似しているのですが、お互いの微生物群集の割合は異なり、肺には独自の属が存在しています。そして肺の微生物叢の一部には長期にわたる自己維持型の細菌群集も存在しています。(肺の微生物叢は口腔咽頭と比べてRalstonia、Bosea、Haemophilus、Enterobacteriaceae、Methylobacteriumが多い。)
肺の正常な微生物叢のバランスは、免疫応答に参加し炎症を防止することで、清潔で安全な肺環境を提供する役割を担っていると考えられています。
真菌群集(マイコバイオーム)
健康な肺における真菌の種は多様です。アスコマイセテスとストレプトマイセスが最も一般的な群集であり、次いでカンジダが優勢で、サッカロマイセス、ペニシリウム、ディクティオステリウム、フザリウムが続きます。さらに、アスペルギルス、ダヴィエラ科、ユーロティウムも存在します。
肺の真菌叢は、細菌を脱水、薬剤、免疫細胞の攻撃から保護するバイオフィルム構造を産生できます。これにより、抗菌剤に対して多剤耐性を持つ細菌株の発生と拡散が可能になります。
Lung microbiome: new insights into the pathogenesis of respiratory diseases: NATURE