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感染後や喘息などの慢性炎症で咳受容体(感覚神経末端)が感作され、咳反射が亢進し続けるしくみ 07/12/25

最初に、風邪のウイルスが気道上皮を直接障害し、上皮細胞の骨格を乱し、細胞同士の隙間が破壊される。その結果、上皮バリア機能が低下し、異物や刺激物が容易に侵入するようになる。前後して、上皮細胞死と再生が亢進し、上皮細胞群の異常修復が始まる。
障害を受けた上皮細胞は、「危険シグナル」として、炎症を惹起させるシグナル物質を放出し、それによって気道局所の様々な免疫細胞が活性化され、持続的炎症性環境が出来上がる。同時に、障害上皮細胞からATPという物質が持続的に放出される。このATPによって咳受容体終末が活性化し、神経発火しやすくなる。
炎症惹起シグナル物質の働きによって、神経線維末端である咳受容体が増殖し、末梢神経ネットワークが増え、刺激伝達経路が増強される。以上の変化の結果、低レベル刺激でも容易に発火するようになる。
また、末梢神経内でも神経伝達ペプチド物質が増加することによって、神経伝達の自己増幅ループを形成すると同時に、さらなる炎症細胞浸潤が呼び起こされ、神経原性炎症が重ね合わされることになる。
以上が、慢性咳嗽や「神経感作咳」の病態の本質である。
これらの結果、感染は治癒しても、神経感作は「リセット」されず、咳反射が亢進したまま「長引く咳」になる。
こうした神経感作性咳嗽に対しての実際に利用可能な治療としては、吸入ステロイドなどの抗炎症治療薬や神経受容体拮抗薬があげられる。

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