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P2X3受容体拮抗薬(ゲフォピキサント)             03/09/25

コデインは、オピオイドμ受容体作動薬であり、延髄の咳中枢の興奮を抑制することで咳を止める一方、オピオイド依存リスクがある薬物でしたが、
P2X3受容体拮抗薬(ゲフォピキサント)は、オピオイド受容体とは関係がなく、依存性のリスクがない薬物です。

P2X3受容体は、細胞外ATP(アデノシン三リン酸) によって活性化されるイオンチャネル型受容体(リガンド作動性イオンチャネル)です。主に求心性神経(感覚神経)に発現し、咳反射や疼痛に関与します。

1. P2X3受容体を活性化する物質
① ATP(アデノシン三リン酸)
P2X3受容体の主要なリガンドであり、直接結合してナトリウム(Na⁺)やカルシウム(Ca²⁺)の流入を促す。
神経の興奮性を増大させ、咳受容体の過敏性を高める。
炎症や組織損傷によって放出量が増加し、慢性的な咳(難治性咳嗽)や神経因性疼痛の原因となる。
② ADP(アデノシン二リン酸)
P2X3受容体に対する親和性はATPより低いが、部分的な活性化を引き起こす可能性がある。
③ 異常なATP代謝産物
炎症環境では、ATPがヌクレオチダーゼによって分解される過程で生じるAMP(アデノシン一リン酸)やアデノシンも、間接的にP2X3受容体の調節に関与する。

2. 慢性咳嗽(難治性咳)では、P2X3受容体が過敏になっています。
気道上皮や感覚神経からATPが放出されることでP2X3受容体が刺激され、咳反射の閾値が低下しています。P2X3受容体拮抗薬(ゲフォピキサントなど)によってその過敏性を低下させることによって、感覚受容体としての咳レセプターや求心性神経の働きを抑制し、咳反射のサーキットの興奮を抑えます。

3.神経因性疼痛においても、末梢神経や中枢神経において、ATPがP2X3受容体を介して痛みを増強するため、P2X3受容体拮抗薬の研究が進められている。

P2X3受容体は、ATPを主要なリガンドとし、ADPや炎症環境におけるATP代謝産物にも反応します。特に炎症時や慢性疾患(慢性咳嗽・神経因性疼痛)ではATP放出が増加し、P2X3受容体の過敏性が上昇することが知られています。

ATP, an attractive target for the treatment of refractory chronic cough; SPRINGER NATURE Link