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咳は悪いものが肺の中に入らないようにする反射です。          03/08/25

咳はアキレス腱反射と同じように、決して意思で現れるものではありません。呼吸器にとって悪いものが入っていかないようにしたり、それらを吐き出して体を守るという大切な働きをしています。咳反射と呼ばれます。

咳反射は、以下の経路で制御されています。
1.末梢の咳レセプター(感覚受容体)が、気道(気管・気管支・喉頭など)に分布し、機械的・化学的刺激を感知。主にC線維(ポリモーダル受容器)やRAP(Rapidly Adapting Receptors:急速順応性受容器)が関与している。
2.求心性神経は、咳レセプターから迷走神経を通じて延髄の咳中枢に情報を伝達する。
3.延髄の咳中枢は、咳反射を統合・調整し、運動指令を出す。
4.遠心性神経は、横隔神経や迷走神経という経路を介して呼吸筋・喉頭筋に指令を送り、咳を発生させる。

のど、気管、気管支にある末梢の咳レセプター(咳受容体)は、主に以下の炎症物質によって刺激を受け、咳反射を引き起こします。これらの物質は、ウイルス感染、細菌感染、アレルギー反応、喫煙、大気汚染などの刺激によって放出されます。
1. ヒスタミン(Histamine)
肥満細胞や好塩基球から放出され、H1受容体を介して気道平滑筋の収縮や血管透過性の亢進を引き起こす。
気道粘膜の浮腫を促進し、気道の知覚神経を刺激して咳を誘発。
2. プロスタグランジン(PGs)
プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンF2α(PGF2α) などが気道のC線維を直接刺激し、咳受容体の感受性を増加。
気道平滑筋の収縮や気道の炎症促進にも関与。
3. ロイコトリエン(LTs)
ロイコトリエンC4(LTC4)、D4(LTD4)、E4(LTE4) は強力な気道収縮作用を持ち、咳レセプターの過敏性を増加。
喘息患者では特に重要な役割を果たす。
4. ブラジキニン(Bradykinin)
血管拡張作用を持つペプチドで、気道C線維受容体(TRPV1受容体)を刺激。
咳受容体を直接活性化し、咳反射を促進。
5. タキキニン(Tachykinins:サブスタンスP、ニューロキニンA/B)
求心性神経終末から放出される神経ペプチド。
ニューロキニン1(NK1)受容体を介して咳受容体を活性化し、咳を引き起こす。
6. トリップV1受容体(TRPV1)アゴニスト(カプサイシンなど)
TRPV1(Transient Receptor Potential Vanilloid 1)は咳レセプターの一部であり、カプサイシン(唐辛子成分)や高温、酸性刺激によって活性化。炎症時に感受性が増大し、咳の閾値が低下する。
7. ATP(アデノシン三リン酸)
P2X3受容体を介して咳受容体を刺激。慢性咳嗽(特に難治性の咳)に関与し、P2X3受容体拮抗薬が新たな治療ターゲットとして研究されている。

以上のように、
咳受容体は、ヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ブラジキニン、タキキニン、ATPなどの炎症メディエーターによって刺激を受け、咳反射を引き起こす。これらの物質は、ウイルス感染や喘息などの疾患で増加し、慢性的な咳の原因となることがある。

Airway Sensory Nerve Density Is Increased in Chronic Cough; ATS Journal